<はじめに>

近年、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)への関心は高まり、投資やビジネスでの活用が急速に拡大しています。

しかし、その利益にかかる税金について、「よくわからない」「個人と法人でどう違うの?」といった疑問を持つ方は少なくありません。

本コラムでは暗号資産の税務上の取扱いの解説を行っていきます。

 

1. そもそも暗号資産とは?
暗号資産とは、インターネット上でやり取りできる電子的な財産的価値のことです。

かつては「仮想通貨」とも呼ばれていましたが、日本では2020年施行の改正資金決済法により「暗号資産」に呼称が統一されました。

特定の国や中央銀行に依存せず、ブロックチェーンと呼ばれる技術によって取引が記録・分散管理されているのが特徴です。
(※) ブロックチェーン…ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、鎖(チェーン)のようにつなげて保管する、高い透明性と改ざん耐性を持つ技術のこと。

2. 暗号資産取引の基本
暗号資産の取引には、主に次の5種類があります。

① マイニング ② 市場での購入 ③ 市場での売却 ④ 暗号資産による決済 ⑤ 暗号資産同士の交換

上記①~⑤の取引に関する計算方法は国税庁HP をご参照ください。

これらの取引での差益が発生した場合、個人では所得税法上の雑所得(総合課税)、法人では益金、差損が発生した場合には損金として扱います。

3.暗号資産の税務(特に重要なポイント)
(1)税率の差

・個人:暗号資産による所得は雑所得(総合課税)に該当し、他の所得と合算して課税されるため、所得が増えるほど税率も上がり、最大約55%(所得税45%+住民税10%)となる場合もあります。

・法人:実効税率が約25 ~ 30%のため、高額な利益が見込まれる場合は法人で取引を行った方が税率面で有利になる可能性があります。

(2)損益通算と損失の繰越

・個人:暗号資産取引は雑所得に該当するため、差損が発生しても雑所得の収入金額を超えた差額は切り捨てられ、損失額の他の所得との損益通算、及び翌年以降へ繰越しは出来ません。

一方で、株式やFX・先物取引は申告分離課税に該当し、同種の所得内であれば損益通算が可能であり、3年間の繰越控除も認められています。

この点が、暗号資産と株式、FX・先物取引との税務上の大きな違いです。

・法人:法人は他の損益との合算を行い、損失が出た場合は最長10 年間の繰越控除(大法人は控除限度あり:所得金額の50%)が認められます。そのため、税務上の柔軟性は高いと言えます。

(3)期末評価損益の計上(法人のみ)

法人が事業年度末において保有する暗号資産は、原則時価法での評価行い、暗号資産の価格変動が大きい場合、含み益が発生すると課税所得が増加し、未実現の利益に対しても法人税が課される可能性があります。

したがって、評価益に見合う納税資金を確保できていないと、資金繰りリスクが生じる可能性があります。(一定の要件を満たしたものは原則法の選択も可能です。)

 

<まとめ>

暗号資産は新しいデジタル資産として魅力的な投資対象ですが、税務上の取り扱いは複雑です。

特に、個人と法人では税率や控除の仕組みが大きく異なるため、自身の投資規模や他の所得状況を考慮し、適切な納税準備を進めることが重要です。

今後暗号資産取引をご検討の方は、安易な判断は避け、正しい知識をもって行って頂ければと思います。