本日4月6日付の日本経済新聞の一面に「個人事業主に識別番号」という記事が掲載されました。かねてよりマイナンバーとは別に個人事業主に事業者番号の付与をという議論はありましたが、今般の新型コロナウイルス禍で諸外国が納税情報や社会保障番号などで支援対象者を割り出して連絡し、申請があればすぐに給付金を振り込んだのとは対照的に、日本はアナログな行政手続きにより給付金支給が混乱するなどの限界に直面したため、本格的に検討に入るとのことです。この制度は2023年10月から消費税のインボイスを導入するのに合わせ、個人事業主に新しい番号を付与します。これにより個人や家族など少数でビジネスを営む個人事業主の事業や収入の規模、雇用状況などに応じて支援が必要な対象者に限定して給付金を配ったり、不正な受給を防ぐことが期待されています。特に近年は組織や時間に捕われず自由な働き方を希望する人や、ユーチューバーやアフェリエイターなど時代のニーズから生まれた新たな職業のフリーランスが増えてきている一方、法的整備が追い付かず公的支援の網から漏れているだけに、早急な制度確立が求められています。

税理士の立場から申し上げますと、大変ありがたい制度になるのではと思っております。というのも電子申告を行う際、初めに納税者や代理人が申請して利用者識別番号を取得しなければなりません。この番号はあくまでも「申請して」取得するものなので、うっかり番号の控えを無くしてしまうとどうすることもできません。また税理士が代理取得をすると納税者が番号を取得したという認識が無く、税理士変更があった場合、識別番号や暗証番号が分からないといったことは日常茶飯事にあります。この場合、番号を再取得することが出来るのですが、そうすると過去の電子申告の履歴が閲覧出来なくなり、結局アナログな形で紙の申告書等の控えが頼みの綱となってしまっておりました。これが事業者としての番号を税務の電子申告の番号になれば(紐づければ)そういったことも無くなり、また税理士として業務受任前の過去の申告の情報も、煩わしい手続きを経ずに確認ができ正しい申告が出来るのではと期待しております。

ただ、税務面を考えた場合、「事業者」をどう定義するかの課題が残ります。所得税法上、事業所得は①反復継続性、②営利性・有償性、③自己の計算と危険において独立して遂行する業務などの要件を満たす必要があり、満たしていない場合は「雑所得」となります。つまりサラリーマンの傍らユーチューバーをしている人は「事業者」では無いと一般的には判断されます。しかし、本当はユーチューバーを本業にしたいがまだ始めたばかりなので稼ぎが無く、生活の為によそから給与をもらっているという人は「事業者」では無いのか?というのは常に議論の対象となる部分です。いずれにしても給付を受けるべき人にしっかり支援が行き届くよう、税務面も含めて制度設計を政府には考えてもらいたいですね。