多くの後継者が、親の会社に入社して5~10年程度で抱き始める感覚があります。
それは「会社は今のままではダメだ」という焦燥感です。
そういった強い危機感を持ち、社内改革に取り組む後継者も多いようです。
しかし、その改革を応援する者はほとんどなく、
後継者はどんどん孤独になっていき、
「もう会社を辞めたい」となってしまうのが陥りがちな一つのパターンです。
そうならないための一つのヒントとして、ある後継者のケースをご紹介致します。
彼は、社内における先代の強すぎる影響力を、自分が代を継ぐ前に薄めていきたいと考えていました。
そのために、今までは先代が全てワンマンで決めていた施策について、
会議などを通じて社員一人ひとりの参加意識を高めたいと考えました。
実際に会議を開き、根気よく社員に意見を募り、やっと意見が出始めた頃、
先代がピシャリと言い放ちました。
「ゴチャゴチャ言わず、こうすればいいだろ!」
会議などは無駄だと言わんばかりにイラついた様子で結論を語る先代に、
せっかくほぐれ始めた社内の雰囲気は、一気に冷たいものになってしまいました。
会議終了後、後継者は先代に自分の意向を伝えましたが、
自分の思いが伝わったようには感じられませんでした。
お互い感情的になってしまい、意見を伝えるどころでは無かったのです。
それでも後継者は
「社内の責任分担や分業化を今すぐ行わなければ会社に未来はない」
という信念を曲げません。
落ち込んでいる売上を社内キャンペーンで取り戻そう!
と施策を実行します。
しかし、悲しいかな、後継者がいくらこぶしを振り上げ、頑張ろうと声を掛けても、
誰一人ついてくる人はいません。
そこでその後継者は「社員のモチベーションに問題がある」と考え解決を図ろうとしましたが、上手くいきませんでした。
なぜこのような事態に陥ってしまったのでしょうか?
実は心理学の世界で「問題所有の原則」と呼ばれるものがあります。
それは「不都合を感じている人が問題を所有していて、
不都合を感じている人しかそれを解決するために動こうとしない」ということです。
これを先のケースにあてはめてみると、
社員のモチベーションが上がらないことに対して、
社員は実は大して困っておらず、困っているのは後継者です。
問題を所有している後継者が動かずに問題を解決することは出来ないのにも関わらず、
問題は社員と考えて改善を待っていても何も改善されません。
そういった状況が続いたため、その後継者は改めて外部の専門家に相談しました。
そこで専門家より「問題地図」を作ることを勧められました。
これは自分を含む関係者全員が置かれている状況や構造を、
図(縦軸と横軸のマトリックス)に表現し問題を分析するというものでした。
このように図解することで、自分の感情や考え方を明確化・客観視することが出来るようになったそうです。
その結果、「社内改革が進まない」という悩みは、
「先代や社員との人間関係の構築が出来ていなかったことに起因している」と、この後継者は気づいたそうです。
その後、後継者は周囲の人達との人間関係の構築を意識し、
社内の雰囲気はずいぶん良くなったそうです。
私たちは何か問題が起こると、その問題をひとまとめにして考えがちです。
しかしその場合、問題と考えていることそのものは問題ではなく、
別のことが真の問題であることもあります。
八方ふさがりになった時は図を書いて
「本当の問題はどこにあるのか?」
を追求することが大事なのかもしれませんね。
(参考文献:月刊ビジネスサミット2022年5月号)
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