前2回に亘り税務調査の概要、及び一連の流れをご説明しました。
そこで税務調査対応は税理士の腕の見せ所ということを強調してお伝えしましたが、ではどうしたら税務調査の対応力を磨けるのか、私見も含めお話しして参ります。
私が思う税務調査で必要な知識、スキルとそれらの身に付け方は以下の通りです。
1.税務調査手続の基礎知識の理解
当たり前と言えば当たり前ですが、税務調査手続の基礎知識が無ければまともに対応できないのは明白です。
しかし税務の専門家である税理士であっても、税務調査手続をしっかりと理解している人は意外と少ないです。
というのも税務調査について法律では国税通則法に規定されておりますが、この国税通則法は税理士試験科目では無いため、意識しない限りは学べないからですし、そもそも国税通則法を学べるような研修会等の機会が少ないからです。
ただそれを知らないと通知の無い調査に応じてしまう、証憑書類を勝手に税務署に持っていかれてしまうなどの違法行為を許してしまいます。
また考え無しに修正申告の勧奨に応じてしまう、質問応答記録書に署名させてしまうなどの納税者が不利な状況に誘導されてしまいます。
更に言えば税務調査結果に不服がある場合は、再調査の請求又は国税不服審判所に審査請求が認められておりますので、その辺の流れも理解しておき、納税者に説明しておく必要があります。
国税通則法を学べる機会が少ないのは中々厳しいところですが、まずは貪欲に探してみることです。
2.税法の幅広い知識、解釈能力
そもそも税理士は正しい税法の適用に努め、適正な納税額を算出することを求められます。
また憲法の生存権の観点からも、納税者の負担が少なくなるよう税額を計算することも求められていると言えます。
そう考えると税法を幅広く押さえ、適用できそうな規定を漏れなく抽出し検討しなければなりませんし、その規定が適用できるか正確に判断しなければなりません。
当然ですが知らなかった、よく分からなかったという言い訳は通用しません。
とは言え税法の条文は難解で簡単には読み解けません。
読み解けるようになるには、普段から読み解き方を解説している税務書籍や情報誌を購読し、条文を読む習慣を作るのが良いでしょう。
3.税務判断能力
法律はある特定の者だけが有利にならない様、緩く作られている側面があります。
そのお陰で公平性が保てている部分はありますが、一方で「著しく」「不相当に」「社会通念上」など具体的な数値や範囲などを示さない抽象的で曖昧な規定が存在します。
しかし税理士はこの抽象的な表現を具体的な数値に置き換え、申告しなければなりません。
そのためには税法がどういう意図で規定されているのかの本質を理解する必要があり、その上で必要な参考になる情報を集めなければなりません。
税務で身近なところで言えば、国税庁長官からの通達、税務訴訟の判例などがありますし、民法、会社法など他の法律や公表されている実態調査などを参考にすることもあります。
4.論理的説明力
1~3に掲げた知識やスキル、情報を集めたとしても、これらを整理し、筋道を立てて論理的に説明できなければ、調査官の指摘に反論することは出来ません。
具体的には「①現行の法律の規定はこうで規定の趣旨はこうである」「②納税者の取引の実態はこうである」「③取引を法律の規定にあてはめ、諸々の情報も参考にして規定が適用できると判断し、税務会計処理をした」という感じです。
これも普段から意識しなければ出来ません。そのためには税理士広報誌や情報誌などに掲載されている税法論文などを読み、論文のセオリーを習得した上で自身でも論文を執筆するのが良いでしょう。
5.瞬発的発言力
4が出来たとしても、税務調査はライブで調査官との丁々発止のやり取りがありますので、いちいち書面に起こしている時間はありません。
言ってみれば1~4を準備しておいて、すぐに発言できなければなりません。
ただ考えていることをよどみなくインパクトを与える形で発言するというのは、相当なスキルが必要であり訓練も必要です。
なかなかハードルが高いですが、訓練の方法が無い訳ではありません。その方法はディベートですね。

