組織が進化を果たすにおいては、リーダーが進化することが必要になります。というのも、リーダーの人間性を越える組織は作ることが出来ないからです。

更に言えば自律型組織を生み、育てるには、リーダーは大いなる受容力を持つ必要があります。

しかし残念ながら、多くのリーダーは自律型の組織に憧れるものの「自分は今のままで、組織だけを変えたい」と思いがちです。それは後継者も同様です。

 

後継者の立場としては、自分はリーダーなんだから、みんな自分に合わせるべきだ、と考えることも多いと思います。特に古いタイプのリーダーシップは、圧倒的な力で、人をグイグイ引っ張っていくことこそがリーダーの在り方だと認識されていました。

ただ現代社会でそれをやると、一歩間違えるとパワハラ問題にもなりかねません。仮にそんなリーダーを頑張って演じてきたとしたら、少し組織との関わり方を変えてみることをお勧めします。

例えば、後継者は組織の中で「ミス」や「トラブル」を嫌がる傾向があります。だから、組織からミスやトラブルを排除すべく、仕組み化に取り組み、例外を認めない方向に舵を切る傾向があります。

これは作業の効率化や、顧客に対する安定的な商品やサービス品質の保持という観点ではとても大事なことです。

一方で、例外を認めない社風は、社員の自律性を損なう傾向があります。そして、組織の進化は起こりにくい環境になります。

 

ここでリーダーはジレンマに陥ります。

理想は自律型の組織でしょうが、ミスやトラブルは避けたい。ミスやトラブルなど、突発的なことを防止するには、管理の強化が必要です。

しかし、管理すればするほど、自律型の組織は遠のきます。後継者の多くがこのジレンマの中でもがくことになります。

更に言うと、中小企業が大企業に勝る点の一つは、小回りが利くことです。時間を掛けない意思決定と、変化や顧客の要望に柔軟に対応できる組織でなければ、中小企業の利点はかなり損なわれます。

実はこのような時こそ、リーダーである後継者自身の変化が求められる時ではないでしょうか。組織が成長するために、リーダーの成長のための課題が目の前に現れているのです。

 

管理か、自律か。これを選ぶに際して、後継者は一定の決意が必要となります。

ただ白か黒かという極論ではありませんから、両者の良い部分を活かせるバランスを考えていけば良いと思います。

とはいえ、いずれにせよ後継者はとても大事な事実を意識する必要があります。それは、どこまで管理を進めても、ミスやトラブルはゼロにはならない、ということです。

例えば大企業や政府組織は様々なシステム化を進め、ルールを決めるなど、非常に組織への管理を厳しく行っています。にもかかわらず、時には信じられないようなミスやトラブルが起こっています。

これを一介の中小企業の中で完璧を期することが出来るのか?と言えば中々難しい問題かと思います。

後継者が、一人前の経営者となる中で大事なことは、そういった不確定な状況を受け入れ、その前提で舵取りを行うことでしょう。そういった、様々な状況へのフレキシブルな対応力こそが、経営者としての器を広げる要素の一部だと思うのです。

 

後継者は、社業の将来への不安や、自身の立場における不安を抱えがちです。こういった不安を抱えつつも、前に進むという心構えが必要になることがあります。

ある政治リーダーは平和活動の中で、日々命を脅かされるような不安の中で活動を推進していました。その人はインタビューで「このような活動を続ける中で、恐怖心を感じることは無いのですか?」という質問に答えてこう言いました。

「怖くない訳ないじゃないですか。恐怖心は無くなりません。ただ、恐怖を感じながらも、意志の力で前に進むしかないんです」。不安に押し潰されそうになりながらも、前に進んでいける勇気を感じる言葉です。

 

不安を感じつつも前に進む—そんな意識を持ってみてはいかがでしょうか。

(参考文献:月刊次世代経営者2025年1月号)