先月まで開催されていた大相撲夏場所で大関大の里が優勝し、その3日後の5月28日に頂点である横綱に昇進しました。
大相撲界で横綱制度が出来てから230年程で75人目であることを見ても、如何に横綱になることが難しく大変かというのが、相撲を良く分からないという方でもお分かり頂けるかと思います。
それだけでも十分に凄いのですが、大の里は初土俵から史上最速の13場所で昇進したのですから更に驚きです。
従来の記録が輪島の21場所で、大横綱と言われた白鵬で38場所、貴乃花で41場所ですから、とてつもないスピードで番付を駆け上がりました。
なぜこれだけ早く横綱に昇進できたのか?大の里の強さを分析すると、「馬力」と「スピード」がいずれも高いレベルにあると識者は口を揃えて言います。
「馬力」だけであれば、かつてハワイ出身力士として200㎏超の巨体を武器に活躍した小錦や曙がいますが、スピードという点では難があり、隙を突かれると脆いところがありました。
一方でスピードを武器に活躍するとなると体を絞らなければならず、巨漢力士に組み止められるとどうしても圧力負けしてしまいます。
大の里はそんな大相撲の定説を覆すかのように、幕内最重量である190㎏超の体で相手に強い圧力をかけつつ、相手に反撃させる隙を与えずに攻め込むため、対戦した相手力士はなすすべが無いような形で土俵から出ます。
私も相撲が好きで40年以上観戦し続けていますが、このような取り口の力士は見たことがありません。恐らく大の里と対戦する力士も、今までにないタイプなだけに参考になるような情報が少なく、対策しきれていないのではないかと思います。
そう言えば大の里は大関昇進の際、伝達式での口上で「大関の地位を汚さぬよう、『唯一無二』の力士を目指し、相撲道に精進します」と述べておりました。
それを目指して大の里は日々精進した結果、天賦の才に磨きがかかって取り口は正に『唯一無二』となり、それゆえキャリアは浅いものの白星を積み上げることができて、空前絶後の昇進記録を作った訳です。
そう考えるとどの世界でも『唯一無二』のものを身につければ、他の追随を許さなく出来ると言えるかと思います。ですが、事はそう簡単ではありませんよね。
大の里がこのような快挙を達成できたのも、恵まれた体格や運動神経など、生まれ持った高い能力があったからこそということは否定できません。
では高い能力が無ければ『唯一無二』にはなれないでしょうか?
私は2つの選択を間違えなければ可能と考えています。
その選択の1つは、自身の強みが何なのかを的確に見極めることです。
そもそもそこを間違えてしまうと、伸びるものも伸びないですよね。ただ自身だけで判断しようとするとバイアスが掛かってしまうので、第三者の意見も聞くと良いと思います。
もう一つは闘う土俵を間違えないことです。
価格競争や大量生産という大企業と同じ土俵に上がってしまっては、正直勝負になりません。
しかし先月もお話ししましたが、現在はニーズの多様化がますます進んでおり、目を向ければ多種多様な隙間需要が存在しています。
競争相手が少なく、かつ市場が成熟していなければ、小規模事業者でもその土俵では横綱になる可能性は十分にあります。税理士業界でも「ひとり税理士」というジャンルを確立し、活躍している方もおります。
その点で言えば私はまだ「唯一無二」と言えるものは何一つないのですが、いつかは税理士業界で「唯一無二」の存在となれるよう、大の里の活躍に刺激を受けつつ、様々なことに取り組んで参りたいと思います。