後継者として親の会社を引き継いだ皆さま、未来が心配で先回ってあれこれ動くものの、想定外の事態が多発して困惑していませんか?

 

後継者というのは、経営の経験が少ないがゆえ、どうしてもいざという時の引き出しはまだまだ充実していません。

その弱さを知っているから、後継者は出来るだけ予測不可能な事態が起こらないように必死になります。それが社内の仕組み化だったり、ルールの厳格化だったり。

しかし、今の社会は正に予測不可能、VUCA(ブーカ:「Volatility:変動性」、「Uncertainty:不確実性」、「Complexity:複雑性」、「Ambiguity:曖昧性」の4つの単語の頭文字をとった造語)の時代と言われております。

環境や災害、政治や社会の変化、あまりにも複雑に絡み合った環境では、数年先の未来さえも読み切ることは困難です。

 

それに対し、昭和時代に活躍した先代は、瞬発力の強いタイプの経営者が多い様に思います。

反面、細やかな戦略を立てて実行するとか、一貫した行動を続けるということを苦手にしている方が多いのではないでしょうか。

当時はインターネットがありませんから、入ってくる情報量は今と比べかなり限られたものでしたし、その情報をどう経営に生かすかというロジックも余り浸透していなかったので、「野生の勘」に基づいて経営をするというのが最善策だったのです。

ここで、全てを想定内に収めたい後継者との指向性の違いが見えてきます。

特に日本ではバブル崩壊以降その反省から、経営の世界でもどちらかと言えば過去の出来事を振り返り、その延長線上の未来を考えた上での経営計画立案、内部管理がうるさく言われた時代が続いていました。つまり世間の風は後継者に味方していました。

しかし感染症による緊急事態宣言、それに伴うテレワークの伸展、オンライン授業の導入など、誰が予想できたでしょうか。この様な予測不可能な状況になってくると、計画や規律だけでは乗り切るのが難しい時代に感じられます。

では一体何が求められているのでしょうか?

 

そんな時代に有効とされる行動サイクルがOODAループであります。次の様なステップを踏みます。

①観察(Observe)→②状況判断(Orient)→③意思決定(Decide)→④実行(Act)→⑤①に戻ってこのループを回す。

一般的に知られているPDCAが「計画」から入るのに対して、OODAループは「観察」から入ります。

まずは、今自分たちが置かれている状態を観察し、判断しましょう、ということです。過去でもなく未来でもなく、「今、ここ」を大事にした考え方だと思います。

つまり計画がそのまま推し進められる状況であればPDCAで実行し、計画と現実との乖離が大きい場合は、現実に合わせた意思決定が必要ということになります。

そして、このサイクルを無意識にやっていたのが、先代の「野生の勘」経営ではないか、と考えています。

特に起業当初は会社は安定しませんから、様々な状況変化に翻弄されます。そんな中で、体験をもって学習した経営スタイルが、VUCA時代に推奨されるOODAループに酷似していたのではないでしょうか。

 

冒頭でお話ししましたが、未来の心配から会社の方針決定をする後継者は多い様に思います。

しかし、自信をもって「自分と、自分の会社は何があっても対応できる」という前提をもって現状を見直してみてはいかがでしょうか。

未来の不安を払拭するために配置したリソースは、もしかしたら最善の今を作るために再配置すると効率が上がるかもしれません。

何しろ、心配は現実化するかもしれないし、しないかもしれない。ならば「今、ここ」にある現実への対処に100%の力を注ぐのが良いのではないでしょうか。

 

また、OODAループの本質は、「とりあえずやってみる」というところにあると思います。

やってみて、ダメならやめる。小さなチャレンジを繰り返し、上手くいきそうなことを見つけるのです。

「今、ここ」でたくさんの手数を出すことに注力することが、結果として、会社の未来を創ることに繋がるのではないでしょうか。

(参考文献:月刊ビジネスサミット2024年2月号)