前3回に亘って一般的な税理士事務所の業務内容をお話しして参りました。
これらの業務だけでも相当な量がありますが、ある意味どこの事務所も行っている業務ですので差別化は図れず、何もしなければ価格競争に巻き込まれることになります。
そこで各税理士事務所は所長の得意分野、お客様のニーズを鑑みて、相続・事業承継、組織再編・M&A、医業・公益法人税務、国際税務などの特殊税務や、税務からの派生業務を行うことがあります。
今回はその中でも相続税の申告業務について説明致します。
相続税とは、故人(被相続人)からその故人の親族などの相続人が相続した財産に対して課される税金です。
具体的には、現金、不動産、株式など、金銭的価値のあるすべての財産が対象となります。相続税は、相続した財産の総額が一定の基準(基礎控除額)を超えた場合にのみ課税されます。
相続税の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地の所轄税務署に申告・納税する必要があります。
法人税の申告・納付期限が原則事業年度終了の日の翌日から2か月以内ですので、10か月もあると随分時間があるように感じるかもしれません。
しかし、相続税の申告のためには、相続人の確認、遺言の有無、遺産と債務の確認、遺産の評価、遺産の分割などの手続が必要なため、大変な時間が掛かります。具体的にどのようなことを行うのか、以下でそのあらましを説明します。
1 相続人の確認
被相続人と相続人の本籍地から戸籍謄本を取り寄せて相続人を確認します。
2 遺言書の有無の確認
遺言書があれば遺言書を開封する前に家庭裁判所で検認を受けます。ただし、公正証書および法務局に保管された自筆証書による遺言は検認を受ける必要はありません。
3 遺産と債務の確認
遺産と債務を調べてその目録や一覧表を作っておきます。
また、葬式費用も遺産額から差し引きますので、領収書などで確認しておきます。
もし遺産よりも債務が多い場合、相続放棄や限定承認(故人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続すること)という方法がありますが、これらは被相続人の死亡を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。
4 遺産の評価
相続税がかかる財産の評価については、相続税法と財産評価基本通達により定められ一般に公表されていますので、それらにより評価します。
5 遺産の分割
遺言書がある場合にはそれによりますが、遺言書がない場合には、相続人全員で遺産の分割について協議をし、分割協議が成立した場合には、遺産分割協議書の作成が必要となります。
これらの手続きをするために必要な書類が国税庁のHPからも確認出来ます。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2018/pdf/10.pdf
次回は相続税の申告業務を進める上での重要なポイントをご説明し、税理士事務所が相続税申告業務を行うメリット、デメリットをお伝えしようと思います。