後継者が親の会社で自らのリーダーシップを発揮し始めると、

それを機に会社を去る社員が一定数出てくることがあります。

 

なぜだと思いますか?

 

私は、この原因には大きく分けて2つあると考えています。

 

1つは「社内の価値観が変化を始めている」です。

つまり、後継者による会社改革が実を結びつつあると考えられます。

この場合、良い方向に向かっているので後継者は慌てず騒がず、どっしり構えていれば良いでしょう。

それでも不安な時は、是非顧問税理士など頼れるパートナーに不安を吐き出すことも大切です。

まずは、ちょっぴり弱音を吐いてみて下さい。思いの他すっきり出来ると思いますよ。

 

さて、問題はもう1つの原因です。

こちらは会社で後継者が「浮いて」しまっている、というケースです。

直近の会社の状況を思い起こしてみて、こんなことをしていたら要注意です。

 

  • 社内のルールを改定し、従業員の自由度を減らした
  • 社内の罰則規定を強化した
  • 組織や業務の仕組み化を進め、例外対応を認めない方向にした
  • 業務や作業のマニュアル化を進め、マニュアルに無い自発的な行動を認めないようにした
  • 給与規定などを策定又は改定し、実績・能力による報酬の差を強くつけるようにした

 

思い当たることは、あったでしょうか?

 

該当した方は、「良かれと思ってやったのに、何が悪いの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

上記で挙げた社内のマネジメントは、いわばビジネススクール的で、

ビジネス書でも、このような「社内の管理を徹底すべき」という論調はよく見られます。

 

もちろんこれらが前向きな動機に則って行われればプラスに働くことも多いのですが、

もし「恐れ」からくる取り組みだった場合は要注意です。

 

どういうことかと言いますと、

 

前回のコラムでも

「ようやく会社の現場仕事にも慣れてきたのに、

後継者がリーダーシップを取ろうとすると、

なぜか反抗的な態度をとる従業員が出てきたりします。」

 

と書いたように、

 

代替わりをしてすぐ 又は、代替わり予定の後継者(貴方)が入社してすぐには、

「従業員の考えや行動を理解できないこと」は、

あなたが想定していた以上に多く発生していると思います。

 

それについて、長い目で見る心の余裕があれば、

状況は少しづつ改善していくと思いますが、

そうはいっても、なかなか好転しない状況に焦ってしまいます。

 

そして、そのような状態が続くと、

理解できない行動をとる従業員に対して、

「従業員が理解・予測できない」という『恐れ』が出てきます。

 

その恐れから「従業員を放っておけば、何をしでかすか分からない」と考え、

「マニュアル・規則で制限をかける」という行動になってしまうことがあります。

 

そうして、余計に問題がこじれてしまった…

というのが、良くあるパターンです。

 

というのも、こういった前提(従業員を放っておけば、何をしでかすか分からない)で作成されたマニュアルは

罰を与えることで人を従わせる」といった発想であり、

その思惑は従業員にも伝わってしまいます。

 

そうすると、従業員たちは

「後継者が必要なのは、一人ひとりの人間としての自分たちではなく、

思い通りに動くロボットのような人手でしかない」と考えるようになります。

 

人はこのような感情的背景には非常に敏感です。

 

結果として社内は疑心暗鬼に陥り、社内で仕事の協力関係が出来るはずもなく、…

部門間の争いは増え、モラルは低下し、会社の業績は良い方向に向かわなくなります。

 

そして会社の業績が下がると、後継者自身の社会的な評価が下がることになり、

その心のいら立ちを従業員か先代か家族にぶつけ、・・・

 

何とか心のバランスを保とうとしますが、

結局それが致命傷となって会社の組織崩壊が起きます。

 

このような苦しい道を、多くの後継者がたどりがちです。

 

 

ではどうすればこんな苦しい道を辿らずに行けるのでしょうか?

 

あなたに限らず、人は『恐れ』という価値基準で物事を判断しがちなのですが、

事業に限っては、『喜び』という価値基準にシフトしてみるのはいかがでしょうか。

 

例えば「会社の業績を上げる」という目標を立てる際、

 

「売り上げを上げなければ自分の評価が下がる

という恐怖から逃れるための行動をとるのではなく、

 

「売上が増えることは、お客様のニーズに応えるお役立ちの機会が増えることであり、幸せなお客様を増やすため

と考えて動くようにすれば良いのです。

 

良くも悪くも後継者の行動や思考は従業員に伝染します。

だからこそリーダーである後継者が、まずは幸せからの行動を起こすよう意識することが、

社員も顧客も幸せにできる第一歩になるのではないでしょうか。

 

(参考文献:月刊ビジネスサミット2021年3月号)

 

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