「令和6年税制改正」にて令和6年4月1日より飲食費の取扱いが変わりましたので(5,000円基準→10,000円基準)、本年7月9日投稿のコラムにて飲食代全般について書かせていただきました。
接待交際費は、ビジネスにおける重要な支出の一つですが、その取扱いについて疑問が多いのも事実です。
損金額が倍増しているので税務調査の強化も予測されます。今回はこの「1万円基準」について税務調査での実例も交えてお話をしていきます。
【前提】
1万円基準は、必要書類の「書類記載と保存」が要件です。
①飲食年月日 ②得意先等の全員の名前、関係性、参加者氏名 ③参加者数 ④飲食金額、店名、住所
※多人数の場合は〇〇部長、他10名に省略可ですが、少人数に場合に多用すると記載不備の指摘を受けるので注意が必要です。
上記を書類(領収書記載可)にて保存する事が必須です。
【過去の税務調査で実際にあった指摘事項】
①参加人員の水増しや仮名、偽名を使用又は省略した場合。
→事実の隠蔽は※重加算税の対象となります。
社長の一人飲みを交際費として計上した場合、重加算税で追徴税額が多額になるリスクが高いので要注意です。
一人で遊興するのは「個人的な飲食費」とされ、役員賞与とされます。
この場合、法人税の損金とされず、源泉所得税も徴収されるので、税金のダブルパンチです。
過去にこのようなことで裁判になり、納税者が負けたという事例もあります。
②1回の飲食代を複数回の領収書に分割した場合。
→分割して領収書を複数枚計上することは違法行為にあたります。
③1万円の判定。
→飲食店支払総額÷全参加人数≦1万円です。
→1人12,000円の飲食代で当社負担が1人10,000円以下でも、店単価は1万円超なので、交際費となります。
→二次会、三次会は別々での判断になります。
但し、同一の飲食店等で二次会を続けた場合は前述した通り領収書分割不可です。
④社内飲食を得意先接待に仮装又は、下請先従業員等を短時間だけ同席した場合。
→当社員が多数の場合は、社内飲食の可能性が有り、下請先等を若干名参加させての飲食は仮装と想定されます。こちらも重加算税の対象になります。
※重加算税は、35%~40%とかなり高くなり、青色申告承認の取消、税務調査の頻度が増える可能性が高まります。
さらに、その調査で仮装等が見つかると更に税金が上がります。
他にも延滞税が高くなり、加算税の加重措置の恐れもありますので、細かいですが、上記の記載事項を示した必要書類をきちんと保管しておくことが必要となります。
まとめ
接待交際費の取扱いは複雑で、細かなルールが適用されています。
支出の正当性を証明する為には、詳細な記録と証拠書類の保存が重要です。
企業は接待交際費の支出に関してしっかりと準備をしておくことで、税務調査の際のリスクも軽減をすることが出来ます。
不明点や疑問点は当事務所までご相談ください。