日本の税制において、株式に関連する取引に係る取扱いは非常に複雑です。

しかし申告方法の選択によって税制上不利になることがありますので、取扱いをしっかり理解しておくことは、株式取引をする上で非常に重要です。

今月は株式取引の税務上の取扱いに焦点を当て、税制の概要や留意点を説明していきます。

 

<株式取引の税務上の取扱い>

1.株式取引に係る譲渡所得等の計算方法

株式等を譲渡(売却)した場合の譲渡所得等の金額は、譲渡価額(売却価格)から取得費(取得価額)と売却手数料等を差し引いて計算します。2以上の銘柄の譲渡をした場合はそれぞれで譲渡所得等を計算した後、合算します。

2.株式取引に係る税額の算出方法

上場株式と非上場株式で取扱いが異なり、別個に税額を算出します。

(1)上場株式(NISA 等は除く)

①譲渡(売却)益が出た場合(譲渡価額>取得費+売却手数料等)
(原則)
譲渡所得に対して20.315%(所得税等15.315% + 住民税5%)の税率が課税され、確定申告が必要となります。
(特例)
金融商品取引業者等に特定口座を開設し、そこで生じる所得に対して源泉徴収することを選択した場合には、その特定口座における上場株式等の譲渡所得は、原則確定申告は不要です。

②譲渡(売却)損が出た場合(譲渡価額<取得費+売却手数料等)
(原則)
確定申告は不要です。
(特例)
・上場株式等に係る譲渡損失の損益通算
その年分の上場株式等に係る譲渡損失がある場合は、申告分離課税を選択した上場株式に係る配当所得の金額とだけ損益通算ができる制度です。これにより配当所得に係る税額の還付を受けられます。ただし、損失が出た年に確定申告を行い、損益通算に係る付表及び計算明細書を添付して提出しないと損益通算は適用されないので注意が必要です。
・上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
発生した損失を翌年度以降(最大3年間)に繰越し、翌年以降の譲渡益と相殺することができる制度です。ただし、繰越控除を利用するには、損失が発生した年とその後3年間、期間中に株式等の売却が無くても毎年確定申告をして繰越控除に係る付表及び計算明細書を添付して提出する必要があります。

(2)非上場株式

①譲渡(売却)益が出た場合
譲渡所得に対して20.315%(所得税等15.315% + 住民税5%)の税率が課税され、確定申告が必要となります。
②譲渡(売却)損が出た場合
確定申告は不要です。なお上場株式のように譲渡損失と配当所得との損益通算、譲渡損失の繰越控除は出来ません。

 

<まとめ>

上記に記載した取扱いは一般的な株式取引についてのみで、相続やストックオプションで取得した場合等は別に取扱いの規定があるなど、更に複雑になっております。

令和6年中に株式取引を行った場合は、お早めに当事務所にご相談ください。