賃上げ促進税制は平成25 年に創設されている「所得拡大促進税制」をベースに、令和4年に創設されたものです。
この制度は青色申告書を提出している中小企業者等が一定の要件を満たした上で、前年度より従業員の給与等支給額※1 を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる税制上の優遇措置です。
この度令和6年度税制改正にて、より適用しやすくなる様、下記の改正が行われました。
令和6年度改正変更点 ★は重要項目
・大企業、中小企業に加え中堅企業向けを新設
・トータルの税額控除率アップ(中小企業は最大40%→45%)
★教育訓練費※2 の前年比率要件の緩和(中小企業は10%→5%)
・女性の子育て支援、活躍推進の観点からの税額控除率加算措置を新設
★賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しを新設
(留意点)
・令和6年4 月1 日~令和9 年3 月31 日までの間に開始する事業年度が適用対象期間。
・適用事業年度の全雇用者の給与等支給額が前事業年度より増額が絶対条件。
・教育訓練費の上乗せ要件は、適用事業年度の教育訓練費の額が適用事業年度の給与等支給額の0.05%以上である場合に適用可能。
※1 給与等支給額
国内雇用者(パート、アルバイト、日雇い労働者も含み、使用人兼務役員を含む役員及び役員や個人事業主の特殊関係者(配偶者及び6親等以内の血族、3親等内の姻族が該当)は含まない。以下同じ)に対する給与等の支給額。ただし、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除。
※2 教育訓練費
国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用のうち外部講師謝金等、外部施設使用料等、研修委託費等、外部研修参加費等など一定のもの。
従来赤字の企業や繰越欠損金があるため、法人税等の納税が発生しなかった企業にはなじみの薄かった賃上げ促進税制ですが、今回の改正で上記の様な企業でも賃上げを実施すれば適用できる可能性が広がりました。
昨今日本では人手不足が深刻化しておりますが、賃上げの実施は人材の確保につながり、教育訓練の充実は従業員のスキルアップを図れるなど業績アップに不可欠ですので、赤字企業こそ積極的に実施をして頂きたいですね。
期限内の黒字達成で減税も受けられますので、企業の発展をさせる戦略として活用いただけたら幸いです。
(参考)賃上げ促進税制パンフレット