後継者がこれからの会社の方針について、社内会議を開くとします。

そんなシチュエーションでは、どのように会議は進行していますか?

 

ありがちなのが、後継者が入念に準備をした資料を基に、後継者が言いたいことを言って終わるパターン。場内はシーンとして、何となく孤立感を感じる。そんな後味の悪い会議になっていたりはしませんか?

そこで後継者は考えます。なぜ自分の言葉が伝わらないのだろうか?

そして次は、より伝わりやすい様な話を用意したりします。それがいつしか、とにかく先代や社員を説き伏せようと頑張る様になります。

ただ残念ながら、説得しようとすればするほど、みんなとの距離は遠くなっていく、そんな経験は無いでしょうか?

 

なぜこのようなことになってしまうのか?ここで視点を変えて原因を考えていきたいと思います。

例えば、男性と女性は物の見方が違うと言います。会話においては、男性は結論を重視し、女性は共感を重視する傾向があると言われています。

この違いが夫婦関係の難しさを生み出しますし、社内でもコミュニケーションエラーが発生しがちです。

女性社員は、共感を求めて話している愚痴を、男性社員は要望と勘違いしてその愚痴に振り回される。望み通りにしているのに、女性社員は満足しない。

それどころか、話をぶった切って結論を出されることに女性社員は不快感を感じる。そんな小さな衝突が、社内の士気を落としたり、部門間の壁を作ったりしがちです。

そういう意味では、後継者と先代の未来設計の違いも、見ている世界が違うことが原因であることも少なからずありそうです。

先代は営業を頑張ればまだまだいけると思っていて、後継者はそもそもビジネスモデルが終わっている、と感じているかもしれません。

このような不一致を感じた時、後継者は「自分の物の見方」を相手に強要しがちです。自分と同じ目線で見て欲しい、という気持ちは分かりますが、大抵は上手くいきません。

大事なのは、まずこちらから相手の目線で理解することなのではないかと考えます。

 

さて、このコラムを読まれている後継者の方の社内には先代のみならず、複数の役員や社員が在籍されていることと思います。

この人たちが、会社と会社を取り巻く環境をどのように見ているかはご存知でしょうか?

これらを知るきっかけ作りとして、ちょっとした時間を作って、こんなワークをしてみてはいかがでしょうか。

場は、会社の今後を考える戦略会議などのシチュエーションだと理想的です。

その中で、シンプルな問いについて考えてもらいます。お題は『私たちの会社の未来に影響を及ぼすものは何か?』。

例えば、材料価格や仕入れ業者、販売先といった話から、日本経済、世界経済という話まで。あるいは、社員の構成や社内システム、社員教育制度など、とにかく思いつく限り沢山の材料を付箋にでも書き出してもらいます。

この時に誰が、どんな意見を出したかが分かるように運営して下さい。そして出てきたものを、次の3つのジャンルに分類していきます。

①社内のこと、②自分たちの業界のこと、③業界の外のこと

ある人は⓵のことばかりを出すかもしれませんし、ある人は②が中心かもしれません。③が気になってしょうがないという人もいると思います。

こういったことを書き出し、発表する過程を見聞きしていると、メンバーが何を見て、何に危機感を感じて日々を過ごしているかがよく分かるようになります。

お互いが「へー、あの人、そんなことを気にしていたんだ」なんていう相互理解が生まれ始めます。

すると、その人の発言の真意が見えてくる可能性が高まります。見えなかったものが見えるようになるだけで、組織の中にちょっとした絆が生まれる可能性もあります。

これを繰り返し実施することで更なるブラッシュアップが出来ると、上記に挙げた問題点を解決する糸口が見つかるかもしれません。

そしてゆくゆくは、社員と夢を語り合う場になれば理想的ですね。

 

このように後継者と先代や社員とは、それぞれ見ている世界が違います。

しかし社内の相互理解が進まなければ経営は上手くいきません。

その解決策として「目線合わせをしよう」とはよく言われますが、後継者の目線に社員を合わせさせようというのは至難の業です。

まずは後継者である私たちが、彼らの見ている世界に歩み寄ることから始めてみてはいかがでしょうか。

(参考文献:月刊ビジネスサミット2024年7月号)