法人税、所得税、消費税などは自身で税額を計算し申告する申告納税方式となっています。
税理士としては税務・会計の原則に則り、納税者であるお客様の申告書を作成しておりますが、本当にその内容で間違いが無いか?税務当局が確認に来ることがあります。これが税務調査です。
この時、税理士は納税者の代理人として立会うことが許され、納税者に代わって調査官に対し、税務会計処理の正当性を主張することなどが出来ます。その主張の仕方次第では納税額が大幅に変わることがあります。
そう考えると税務調査対応は税理士にとって重要な業務の一つで、税理士の手腕が試される場面と言えます。
税務当局が税務調査を実施したい場合は、原則納税者に直接連絡が行きますが、ご契約頂き申告書に税務代理権限証書を添付して提出している場合は、税理士事務所に連絡をします。
そこで調査先を伝えられ、臨場(調査官が調査先の事務所等に訪問して帳簿等の確認を行うこと)での調査日時の調整依頼をされます。
それを受けて我々税理士は調査先となったお客様に税務調査がある旨を連絡し、日程調整をご依頼します。
税務調査は中小事業者であれば平日のうち1~3日間、10~16時(途中昼休憩1時間程度あり)の時間帯で行うことがほとんどです。
基本的には税務当局より調査日数の希望を提示されますが、この通りほぼ終日拘束されてしまうため、お客様の負担も考慮しつつ日程調整を行います。この辺りは税理士の腕の見せどころでもあります。
臨場調査日程が決定したら、税務当局より改めて税務調査実施の通知が来て、日時、場所、調査官名、調査税目、調査対象期間(通常は直近3期)、用意すべき書類などを告げられます。
それを受けて税理士は改めてお客様に連絡し、ご用意して頂く書類のご案内を致します。
ただこれでいきなり調査に臨む訳ではなく、お客様との事前打合せを行います。
そこではまずご依頼したご用意頂く書類が全て揃っているかの確認をしなければなりません。ご用意頂く書類は一般的に調査対象期間の「決算申告書類」「総勘定元帳」「請求書、領収書、契約書等」「源泉徴収簿」「株主総会議事録」「各種規程」などとなります。
これらは税法で7年間の保存が義務付けられておりますので、何らかの事情で見当たらない等があると、それだけでペナルティーの対象になってしまいます。
こういった場合は、取引先に再発行を依頼するなどの対応が必要となり、別途時間が取られることになりますので早めに行わなければなりません。
また調査期間の帳簿を一通り確認して、税務調査の論点となりうる箇所を洗い出し、お客様にお伝えします。
さらに税務調査が初めての方に対しては、臨場調査当日の流れをご説明し、調査官からの質問に対し回答する時の注意点をレクチャーしたりします。
これらを行うことで、スムーズな税務調査となるような流れが出来ます。
この事前打合せですが、1回で済む場合もあれば、確認を行っていく中で様々な問題が出てきた時は何回も行わなければならず、中々読めないところがありますね。
いずれにしても調査前も結構時間が取られることを想定してスケジュール調整を考えていかなければなりません。
臨場調査当日は調査官が到着する10時より30~60分前にお客様の事務所に伺います。
そこで改めて税務調査の流れを確認し、調査官からの質問に対し回答する時の注意点をおさらいして調査官を迎える準備をします。
調査官が到着した後はまず名刺交換を行い、その後雑談的な形で調査官より会社の成り立ち、商流、取引先などについて質問を受け、それが終わると調査官は帳簿と請求書等の確認を始めます。
この確認が始まるとお客様も税理士も特にすることが無いため、お客様には仕事をして良いことを伝え、調査官から質問があった時のみ回答するよう指示します。
この時お客様の発言に税理士は注意を払い、万が一不用意な発言をしてしまった時は咄嗟にフォローを行います。
こういった時間が昼休憩を除き16時頃まで続き、調査日が複数の時は以降も同様に続きます。
臨場調査が終わると調査官よりその旨を伝えられ、その後明らかに非違があった事項、及び非違の可能性がある事項の指摘があります。
ですのでこの臨場調査で全てが完了する訳ではなく、その後納税者側、課税庁側でそれぞれ指摘事項の詳細な検証に入りますので、税務調査はまだまだ続きます。
なお想定したより調査の確認事項が少なかった場合は、臨場調査が予定よりも早く終了することもありますし、その逆で確認事項が多く時間が足りない場合は、調査官より追加臨場調査の日程調整を依頼されることもあります。
次回は臨場調査以後の流れをご説明致します。

