世の中には経営者団体が星の数ほどあります。

私もいくつか加入している団体があるのですが、大抵団体の会長の任期が定められています。一人の会長が会を私物化しないためのルールです。

その団体を少し外から眺めていると「会長が代われば組織が変わり、空気も大きく変わる」と感じます。もちろん、施策や指示、仕組みを変えれば組織は変わります。

しかし、そうした外枠だけでなく、内面的な変化も大きい様に思うのです。

そう考えると、リーダーの心持ちが組織に与える影響は非常に大きいことに気付きます。

背景には、リーダーの思いの強さ、その人の器から感じられる心理的安全性など、様々な要素があるようです。

一方で、リーダーの内面は隠しているつもりでも社員には大抵見抜かれています。

例えば、社会貢献なんて本気で考えたことのないリーダーが「社会貢献だ!」と声高に叫んでも、それが本心では無いことを、社員の多くが感じ取っています。嘘はバレるのです。

 

またある経営コンサルタントはこんなケースを経験したそうです。

コンサルタントとして関与している会社の後継者が、社会起業的で見栄えの良い第二創業プランを会社に提案しました。

コンサルタントは少し離れたところから見ていましたが、そのプランには何となく「熱」を感じなかったとのこと。

後継者とは数回しか会ったことが無かったそうですが、話が「浮ついている」ように感じたそうです。

話を掘り下げていくと、どうも大事なことから逃げているような気がしてなりません。

事業開拓における最も大変な部分をおざなりにしたまま「解決が難しい課題をビジネスで解決する」という、その人自身が演出した「美談」に酔いしれているように見えたのです。

ここで言う「最も大変な部分」とは「お客様からお金をいただく」ということです。

 

考えてみると、先代が活躍していた時代のビジネスと言えば、モノに紐づいていることが多かった様に思います。

「これだけのものをつくるには、これだけのコストがかかるから、この価格で売らねばならぬ」という譲れない基準がありました。

しかし、今やビジネスは複雑化。「モノを売り、その対価にお金を得る」というシンプルなモデルは成立しにくくなりました。

そのため、様々なアイデアで、お客様にお財布を開いてもらう必要があります。

かつては、お客様に価値をしっかり伝え、その対価として頂いていたお金—。

しかし、この後継者は、そこに向き合うことを避け、適正な対価を頂くことから逃げているように思えました。

これではビジネスは先細り、明るい未来を想像することは出来ません。

 

今回の話は極端に思えるかもしれません。

しかし例えば、人とコミュニケーションを取ることが苦手な後継者が「和気藹々な組織を作りたい」と目標を掲げたとしても、その違和感は直ぐに社員に伝わります。

この場合、本人が人を好きになるようなブレイクスルーを起こすか、あるいは「自分は人とのコミュニケーションが得意ではない」ことを前提として、別の組織の在り方を模索する必要があるのではないかと思います。

後継者は、心の中に葛藤を抱えたまま「経営者」という立場に立つことも多く、それが自身や組織の試練に結びつくことも少なくないと考えています。

では「好きでもなく、やりたくもないのにやらねばならぬ」と感じている場合、どのように乗り越えれば良いのでしょうか。

 

「自分は何を本当にやりたいのか」「それを今の仕事にどう結び付けるのか」「実現するにはどうすれば良いのか」—。こうした問いに、若いうちから明確な答えを出すことは難しいでしょう。

とはいえ「自分のあるべき姿」を見つけるには、様々なことをためしていくしかありません。

嫌なことでもやってみてどうだったのか、あるいは別の方法をためしてみたらどうだったのか。

トライアンドエラーを繰り返す中で、どこかで必ずヒントが見えてきます。

自分の行動と本心との間に「ズレ」を感じた時、それは成長のチャンスです。

自己革新のキッカケとして捉えてみてはいかがでしょうか。

そうすれば、間違いなく会社は変わります。

(参考文献:月刊次世代経営者2026年5月号)