税理士はお客様よりよく「先生」と呼ばれたりします。税務の専門家として、分かりやすく税金について教えてくれる人という意味で、「先生」と呼ばれるようになったのかなと想像しておりますが、私はお客様とは対等な関係を築きたいと常々思っていますので、「先生」と呼ばれるのに少々違和感があります(かといってお客様の気持ちもありますので「先生」と呼ばないように強制はしておりませんが)。そんな私が唯一「先生」と呼ばれて然るべきと認識している時もあります。それが今回のタイトルにある「租税教室」で学校に登壇する時です。
さて租税教室と聞いても全く聞きなじみのない方もいらっしゃるかもしれません。それもそのはず、租税教室が開始されたのは平成15年で、まだまだ歴史は浅いです。では租税教室ではどんなことを話しているのか?実際の授業の内容はというと、「税の歴史」から始まり「今の日本の税金の概要」「身近な税金は学校にもいっぱい」「税金の集め方、税金の使われ方」などを説明しています。途中「どうやったら公平に税金を集められるか?」というグループワークを行ったりしますし、「税金クイズ」を出したりして生徒たちも飽きずに聞けるような工夫も施しています。最後に「税理士の役割」を話し、少しでも税理士を身近に感じてもらうようアピールも忘れておりません。こうして税務の専門家である税理士自ら講師となって小・中学校や高校で税金の授業を行うことは、これから世の中を支えていく若い世代の人たちに非常にためになると学校側での認識が進み、令和元年には全国で1万2千を超える実施件数を数えるまでになりました。
私が所属する税理士会でも昨年度6校で租税教室を実施致しました。ただ実は当初、租税教室の開催を見送る方向で予定しておりました。ご存じの通り昨年は新型コロナウイルスの感染拡大により、東京都では6月頃まで登校自粛の措置が取られたため、学校のカリキュラムをこなすのに相当苦慮され、租税教室を実施する余裕など全く無いのではとの考えからでした。それと講師に対する安全性の確保という点でも色々と課題がありました。
しかしそんな矢先ある学校よりどうしても実施して欲しいとオファーが来ました。始めは上記の事由を丁寧に説明し、オファーを受けられるかどうか微妙な状況であると伝えましたが、学校側は一歩も引きません。学校側も大変な状況である中のこの強い思いに我々は心を動かされ、どうしたら安全に実施できるか検討に入りました。
検討の結果、税理士側から一方的に話す部分については事前収録を行った上で学校に配信し、双方向でやり取りがある部分はオンラインで実施することにしました。ただいずれにしても初めて取り組むことばかりで、実施まではとにかく試行錯誤の連続。本当に上手くいくのか疑心暗鬼になることも度々ありました。しかし関係者の尽力のおかげで初のオンライン租税教室は無事成功!これで我々も自信をつけ、次々とオファーを快諾。実施した学校にも大変喜んで頂けました。この租税教室を通じて、改めて本当に税理士が必要とされていることを実感し、我々も嬉しい気持ちになりました。
租税教室を実施するに当たり、準備には結構時間が掛かりますし、当日の拘束時間も少なからずあります。しかし多額の報酬を貰っているわけでは無く、私はほぼボランティア感覚でやっている感じです。それでも私はやりたくて租税教室の講師を引受けています。次回のコラムでその理由をお伝えしたいと思いますが、これからの世の中で生き残っていくためのヒントとなる内容でもあるので、楽しみにしていて下さいね!