今年9月のコラム34で電子帳簿保存法(以下「電帳法」)の改正について説明致しましたが、全ての事業者に関係がある事項がいくつかあること、さらにしっかり対応できていなければ重い罰則があることをお伝え致しました。

その中でも電子取引により授受した請求書、領収書などの書類について、紙出力をしていても電子データで保存していなければ「青色申告が取消し」になるというものがありました。かなり重い罰則であったため、納税者より国税庁に問い合わせが大変多く寄せられ、我々税理士業界も施行時期が令和4年1月1日と周知するには余りにも時間が無い上、厳しすぎる内容との声が多く上がり、要件を緩和するよう国に要望致しました。

これに対し国税庁はこの度電帳法一問一答に更なる補足説明を11/12に公表しました。それによると、従来と同様に、例えば、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものでは無いとのことでした。

つまり、令和4年1月1日以後、電子取引情報に係る電子データの保存が義務化されますが、「書面で取引内容の確認ができ、かつ、その申告内容が正しいもので、書面保存をしていること以外に特段の事由が無いような場合」には青色申告の承認取消しや、支出した費用の経費性が認められないといったことにはならないということです。

これで従前の通りの保存方法をしっかり運用していれば重い罰則は当面見送られたわけですが、もし今回の追加事項の公表が無ければ「領収書はデータではなく紙で送ってほしい」というデジタル化に逆行する動きさえ起きかねなかったと言えます。

ハッキリ言って今回の国の対応は「お粗末」であり「傲慢極まりない」です。デジタル化を推進したい気持ちは理解できますが、ITに対しての理解度、習熟度は千差万別であり、取り残される人が出ないよう丁寧に時間を掛けて周知を心掛けないと、かえって混乱を巻き起こします。そういった感覚は実務で普段から納税者に多く接している税理士はよく分かっているので、しっかり意見を聞いてもらいたいものです。またデジタル化に対応しない者に罰則を与えるような形で強制して無理やり推進するのではなく、利便性を高めることで、多くの人が自発的にICTを活用していくような形での推進をしてもらいたいですね。