事業主は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類(以下「書類」といい、帳簿と併せて「帳簿書類」といいます。)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存しなければならないというルールがあります。しかしこれによってその帳簿書類を保管する場所を確保しなければならず、取引が多い業種ですとそのコスト負担も大きいとの声も聞かれておりました。

そこで平成10年度の税制改正で国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等の創設等が行われました。これにより自己が電磁的記録により最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する帳簿書類で一定の要件を満たすものは、紙による保存によらず、サーバ・DVD・CD等に記録した電磁的記録(電子データ)のままで保存することができるようになりました。
これで帳簿書類のペーパーレス化が進んだかといえば、残念ながらほとんど浸透しませんでした…というのも、

  • 電子データによる帳簿の備付けを開始する日の3か月前の日までに、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書を提出し、承認を受けることが必要
  • 電子データの非改ざん証明機能として、タイムスタンプを付すことが必要

などの理由により、手間やコストがかかったためでした。しかしクラウド会計の開発が進み、スマホで領収書等をスキャンできるようになったこと、ネット決済が格段に増えてきたことで当事務所でも「クラウド会計に取り込むことで書類の保存にならないの?」とのご相談が最近増えておりました。同様の声は世間でも多数あったのでしょう、兼ねてより各所から改正希望が出ていたところ、令和2年度税制改正で電子帳簿保存制度の見直しがなされ、10月1日より大幅に緩和されたものが施行となりました。

今回の改正では、「電子取引の取引情報」に関しては、電子帳簿保存法の申請・承認なく「オリジナルの電子データ」を保存していればよく、出力した紙の保存は要件付きですが不要になります。それによりクラウドサービスを利用した売上明細はもちろん、クレジットカード・SUICA・スマホ決済などは明確に紙を出力・保存する必要はなくなります。ただこれで「帳簿の記載事項(取引の年月日、内容、金額、相手方の氏名又は名称)」を省略して良いということにはなりませんので、記帳に関しては従来通りに処理を続けて下さい。これ以外にも運用に関しては細かい留意点がありますので、導入の際は必ず税理士にご相談下さい。

 国税庁HP「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)」