皆さまも勿論自覚されているとは思いますが、ここ数年の世の中の変化はかつてないほど目まぐるしいものになっております。コロナ禍は言うに及ばずですが、ウクライナ情勢の影響に伴う化石燃料の価格上昇、激甚災害の多発による農地や製造拠点、交通インフラの被害、これらの要素が合わさったことでの原材料費の高騰など、上げればキリがありません。これらによって多くの事業が形態の変化を余儀なくされましたし、地球温暖化の対策として小さな事業体にもSDGsへの取り組みが求められてきております。しかし時代の変化は常に付きまとうものですし、大きな危機もかつて全くなかったわけではありません。そういった荒波を乗り越えて100年企業となっている会社も、日本には数多くあります。
一方少し前の調査で、過去30年間に廃業した会社は約282万社、年間10万社近くが廃業しているというデータもありますし、また廃業はしていないものの、赤字の企業は全体の約73%にも上るとも言われております。これらを総合すると約87%が失敗している計算になります。つまり経営の海に飛び込んだ人の9割近くが溺れるか、溺れそうになっていると言えるでしょう。普通であれば、そんな海に飛び込みたいとは誰も思わなくなりそうですが、実は失敗の根本的な原因というのは次の2つにほぼ集約されています。1つは経営者が経営をしっかり学んでいないことで、もう1つは守りが弱いことであります。
もちろん創業期であれば、今までに無い新しい価値を世の中に広めなければなりませんので、まずは攻めの経営が必要となります。現存する多くの企業は創業期に攻めることで成功を収めております。一方で、事業が軌道に乗り始めると守りが必要になります。攻めは一点突破でも可能ですが、守りは商品知識やマーケティングだけでなく、財務や労務、法務、組織作りや人作りなど、全方位的に経営を知ってなければなりません。特に現在のように環境変化が激しい時に、攻め一辺倒なのはリスクが高いので、絶対に会社を潰さないためには守りを優先していく、つまりは上記の経営に必須のタスクを学ぶ必要があります。
ところが驚くことに、日本の多くの経営者は経営のことをあまり学んでいません。これは日本特有の環境もあるので一概に経営者だけを責められない部分もありますが、経営を学んでいない人は得てして攻めて上手くいったときの成功体験に固執したりして、「自分は経営のことを分かっている」と思い込み、更に学ばなくなるという悪循環に陥りがちになります。当たり前ですが、知らないことで成功するのは並大抵のことではありません。経営者が学ぶ姿勢を持てるかどうかは、会社の継続性に直結するといっても過言ではありません。
「守り」の経営の具体的内容は今後のコラムでご紹介しようと思っておりますが、実は当事務所のご面談時に私は意識してその内容をお話ししております。経営の海で溺れないための泳ぎ方を聞きたいという方は、是非当事務所にお問い合わせ下さい。
参考文献:月刊ビジネスサミット2022年2月号(生き残るにはまず「守り」の経営から/浜口隆則)