2024年から相続不動産を3年以内に登記することが義務化され、怠れば過料(国又は地方公共団体が行政上の義務違反に対して科す金銭罰)に処されるようになることをご存知でしょうか?

そもそも相続登記とは、相続により不動産を取得した場合に不動産名義を相続人に変更することを言います。一見当たり前の様ですが、現状では相続で譲り受けた不動産を登記するかどうかは相続人の任意に委ねられております。そのため相続人が固定資産税などの税負担を避けたり、土地管理の煩わしさから放置したりするケースが多く生じております。しかし、そのままにしておくと①不動産の売却や担保設定が出来ない、②権利関係が複雑化する、③不動産が占有されてしまう可能性がある、④認知症発症で遺産分割協議ができない、⑤必要書類の入手が困難、⑥修復もままならず不動産が荒廃、といったリスクが生じます。事実、上記の理由により所有者不明土地の総面積は2016年時点で九州本島を上回る410万ヘクタールとなっています。今後もこうした土地が放置され続けると、2040年には北海道本島の面積に迫る720万ヘクタールに達し、約6兆円の経済損失をもたらす可能性があると有識者が警鐘を鳴らし、それを受けて国は2020年に土地基本法を本格改正し、土地所有者の責務を明確化しました。

今回はその総仕上げとして民法や不動産登記法の改正を行いましたが、これにより「相続登記は義務では無いので、このままにしておこう」という理屈は通用しなくなります。相続の発生を知ってから3年以内に所有権移転登記を行わないと、10万円以下の過料となります。また2024年を目処に施行される予定となっていますが、施行前に相続した不動産でも登記義務の対象になるので注意が必要です。また住所変更登記も2026年までに義務化される予定です。

では実際に相続登記をするには原則として、まず相続人の特定と相続人全員による遺産分割協議が必要になります。しかし、これまで名義変更をしたことが無く、名義人が江戸時代生まれの先祖のままであることも珍しくありません。こうしたケースで問題となるのが、法定相続人がネズミ算式に膨らんでしまっていることです。相続人の特定に必要な戸籍謄本集めに手間が掛かる上、会ったことも無い人、連絡がつかない人、認知症などで意思表示が出来ない人らとのやり取りには時間もコストも掛かってしまいます。しかし、仮に名義人が江戸時代の先祖のままであっても、相続人が知った以上は3年以内に相続登記をしなければなりません。

こうなると素人の手には負えませんので、まず登記の専門家である司法書士にご相談されるのが良いでしょう。不慣れな法務局での登記簿謄本の取得代行や、相続人が誰であるかの特定もしてもらえます。またこの改正によってスムーズに実行するための制度も新設されておりますので、それを踏まえて対応してもらえます。ただそうは言っても相続登記までの時間は限られていますので、仮に専門家に依頼したとしても対応が難しい場合もあります。そうならないためにも相続が発生してからではなく、相続発生前から保有する不動産を洗い出し、名義や住所をチェックすることからスタートすることをお勧めします。

(参考文献:月刊所長のミカタ2021年12月号)