前回概要をお伝えしてその後すぐに改正点をお伝えするつもりが…1月以上経ってしまいましたね…スミマセン!有難いことに新しいお仕事も頂きまして、色々バタバタしておりました。でも新しいスタッフも入社し、少しずつ業務を移行していますので、コラムの方をしっかり連載していけるよう頑張ります。

さていよいよ本編の説明ですが、本年度の改正点を箇条書きにすると以下の通りになります。

①給与所得控除に関する改正

②基礎控除に関する改正

③所得金額調整控除に関する改正

④各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正

⑤ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除に関する改正

⑥年末調整関係手続の電子化

上記について改正点を全て丁寧に説明すると大変な長文になってしまいますので、詳細を知りたい方は下記の国税庁のHPにアクセスして確認してみて下さい。

https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/01.htm

掻い摘んで説明しますと、①は給与所得控除(給与をもらっている人にも認められている概算経費のようなもの)が昨年まで最低65万円であったものが、55万円に減少し、更に上限220万円であったものが195万円に減少したというものです。その上限に掛かるラインも、昨年までは給与収入が1,000万円超であったのが850万円と下がっております。そうすると結構な数の方が増税となってしまいますね。

しかしご本人や扶養親族等が特別障碍者であったり、扶養親族が23歳未満という人については、いきなり増税を受け入れてもらうのは申し訳ないということから、③の規定が設けられ最高15万円まで給与所得から控除できるようになっております。

②は誰でも適用される所得税が掛からないラインとして基礎控除というものがあり、昨年までは38万円でした。これが今年から48万円に増額されました。一見喜ばしい様にも見えますが、給与所得控除の下限が55万円に減少しているので、給与所得者の税金が発生しないラインは103万円と従前と変わりません。それだけでなく昨年まではどんな高額所得者にも適用されていたのが、今回の改正で所得金額が2,400万円を超えると控除額が32万円に減少し、2,450万円を超えると16万円、2,500万円を超えるとゼロになってしまいました。ごく一部の高額所得者対象ではありますが、これも増税ですね。

④につきましては①との関連という感じで、給与所得控除の最低額が下がったのを受けて適用要件の金額を上げたというものです。

⑤が今回1番大きい改正では無いでしょうか。昨年までは寡婦(寡夫)控除というものがあり、死別又は離別をした人が扶養親族である子がいるなど一定の要件を満たすと対象となっておりました。しかし男女で適用要件が異なっている上、未婚のひとり親が対象外となっていたため、憲法で謳っている法の下の平等に反するのではないかという議論が常にありました。それが本年に改正され未婚のひとり親も控除を受けられることになり、男女による要件の違いも無くなりました。

これで全て男女同等となったかというと実はそうではなく、寡婦控除の一部は残っております。その要件を確認すると「夫と死別した後婚姻をしていない者等で合計所得金額が 500 万円以下の者」又は「夫と離婚した後婚姻をしていない者のうち、合計所得金額が 500 万円以下で扶養親族を有している者」となっております。後者は扶養親族とあるので、ひとり親控除とどこが違うのかと一瞬思われるかもしれませんが、例えば親や兄弟を扶養している方が対象ということになります。年老いた親御さんを養っていながら、扶養親族に入れていない方も結構多く見受けられるので、改めてその辺りを注意深く確認した方が良いですね。

それとひとり親について、あくまでも婚姻していないことが要件になりますので「事実婚」をしている場合はNGとなります。最近では自治体によって事実婚であることを住民票上で表示していることもありますので、そこもしっかり確認が必要ですね。

最後に⑥ですが、これは保険料控除証明書や住宅借入金控除の残高証明書を昨年までは書面で提出が義務付けられておりましたが、マイナポータルを利用することで保険会社や金融機関より上記証明書を電子データで受領することが可能になり、それを電子データで勤務先に提出できることになったというものです。これにより書面の紛失や記入漏れ、ミスが無くなり、年末調整業務の効率化が図られるという、なかなか画期的なシステムと言えるかと思います(ただ日本はIT後進国であるので、世界と比べると「遅い!」のかもしれませんが…)。

しかしながらこのシステムが国税庁から公表されたのが本年10月であったため、給与計算や年末調整ソフトを製作している各ベンダーの対応が間に合っておらず、自社で年末調整を行っている大手企業を除いては導入したくても出来てないというのが実情です。当事務所もこの件に関してお客様よりお問い合わせがありましたが、今年は「紙ベース」での提出をお願いしております。

いよいよ次回はこれらを踏まえて、年末調整への影響をお伝えしていきます。