ついに10月よりインボイス制度が始まりました。

これは非常にインパクトが大きい消費税の制度改正であることは再三申し上げてきましたが、それ以外にも年収の壁への支援強化として、労働者1人あたり最大50万円を事業者に支給する助成金の新メニュー創設が先日発表され、本年10月より順次導入されることとなりました。

また所得税、法人税において「賃上げ促進税制(事業者が前年度より従業員の給与支給額を増やした場合、増加額の一部を法人税又は所得税から税額控除できる制度)」についても、赤字の事業者にも適用できるよう減税制度を強化する方向で検討していることも分かりました。

 

改めて見るといずれの制度改正も「ヒト」が絡むもので、政府はとにかく国民に働いてもらいたいという思いの強さが感じられます。

裏を返せば国全体の総労働時間を増やす、かつ生産性を上げなければ、少子高齢化が急速に進む日本経済を支えられず、国際競争力も失っていくという「日本崩壊」の危機感を抱いていると言えるでしょう。

よく日本はバブルが崩壊してから急速に経済が冷え込み、挽回してきたかと思った途端に災害に見舞われたり、リーマンショックなどの影響を受けたり、コロナ禍に陥ったりして結局沈んだままとなっていると考えられていますが、果たして本当にそうなのでしょうか?

 

日本が生産性の低い国となったのは、実は最初の東京オリンピックが開催された1964年であったという識者もおります。

この年に日本はOECD(経済協力開発機構)に加盟したのですが、OECDは、先進国間の自由な意見・情報の交換を通じて①経済成長、②貿易自由化、③途上国支援に貢献することを目的として設立されており、これに加盟することは日本が先進国として世界的に認められたことに他なりません。

それであれば五輪開催も含めて経済成長のピークだったのではと思いたいところですが、一方でOECD加盟条件として「資本の自由化」を突きつけられておりました。

他の途上国を支援するのであれば、それ位は出来なければというある意味真っ当な主張ですが、当時の日本では、資本が自由化されれば外資に乗っ取られかねないという脅威論が唱えられるなど、事業者に本当の強さはまだ備わってなかったのでした。

そこで加盟条件を呑む一方、護送船団方式に「小さな企業」を守るシステムが続々と整備され、その一つとして中小企業基本法が前年に制定されました。同法は当時「中小企業救済法」とも言われたほど小さい企業に手厚い優遇策を示し、その対象となる企業を絞り込みました。

しかしこれが逆効果となってしまい、優遇措置を目当てに50人未満の企業が爆発的に増えてしまったのです。その結果、中小企業を応援して日本経済を元気にしようという精神からつくられた法律が、優遇に甘えられる「中小企業の壁」を築き、「他の先進国と比べて小さな企業で働く労働者の比率が多い」という非効率な産業構造を生み出す状況を作り上げてしまいました。

 

経済成長が望める状況の時はそれでやり過ごせたものの、成長が頭打ちとなり、現行の体制では日本を守り切れなくなったと政府が判断したのであれば、冒頭の制度改正を行っていても何ら不思議ではありません。

そうなると当然、中小事業者は安穏とはしていられず、喰らいついていかなければ淘汰されるのみです。

今後は国が手助けしてくれるのを待つのではなく、自分から情報を仕入れ、制度改正の理解に努め、より多くの利益が出るように知恵を絞って働く、正に「働かざる者食うべからず」を肝に銘じることが生き残るための最善策ではないでしょうか?