今年も新型コロナウイルス感染拡大の影響で、確定申告の期限が4/15と延長されました。毎年2/15の確定申告開始の日を迎えると「ついに仕事漬けの日々が今年も始まるな~」という気持ちになります。裏を返せば当事務所は有難いことに毎年多くの確定申告のご依頼を頂いているということですので、独立してからは辛いと思ったことは一度もありません。しかし期限内に無事に申告が終わるかどうか、毎日やきもきしながら仕事はしているので、精神衛生上は良くない状態が続いております。少しでもこの状態を和らげようと、昨年は特別キャンペーンを実施してみました。おかげで、資料の回収率は非常に良くなり、今年は順調に作業が進められ、昨日4/15までにほぼ申告が完了致しました。何事も準備が大切ですね。

こういった準備の大切さを私は色々なところで学び、経験を通じて今に生かしておりますが、その中で一番印象に残っていることの中に「道場六三郎のお品書き」があります。

道場六三郎はご存じの方も多いと思いますが、90歳近くの今でも厨房に立っている日本を代表する和食料理人です。道場の名を世に知らしめたのは、約30年前に放映されていた「料理の鉄人」という「鉄人」と呼ばれる各ジャンルのトップの料理人と、腕に覚えがある料理人がキッチンスタジアムという場においてテーマ食材を生かして1時間以内に料理を作って対決をするという番組で、そこで道場は「和の鉄人」として出演し、9割以上の勝率を残し「最強鉄人」の名を欲しいままにしたのでした。

道場の戦い方で特徴的だったのは、毎回開始直後に「お品書き」を書くことでした。最初は審査員に対するパフォーマンスかな?と思っていましたが、ある時道場はお品書きを書く意味をこう話していました。「キッチンスタジアムで戦う際、大事なのは最初と最後の10分。最初は必ずお品書きを書くこと。これで今日の完成形を助手と共有することで、作業を組み立てることが出来て効率よく動けるんだ!」

1時間という制限時間がある中で4,5品作らなければならないとなると、一刻も早く作業に取り掛かりたいというのが一般的な人の心理だと思います。しかし道場は準備の大切さを痛いほど分かっているだけに、時間を犠牲にしてでもお品書き(作業リスト)を書いていたのでした。もちろん料理の腕や発想力、機転の利き方などが人並外れていたというのはありますが、この「お品書き」が道場を最強鉄人にした大きな要因だったのではと私は思っております。

それと同じかどうかは分かりませんが、私も税理士試験受験生時代、講師の先生から最初に3分ほど、問題文を「素読み」するよう指導されました。税理士試験は2時間という制限時間がありますが、まずその時間内では全問回答は不可能なほどの分量です。その中で如何に効率よく問題を解くために、難易度を計り、解答する順序を即座に組み立てるためには素読みが必要だったのです。結果、時間は掛かりましたが税理士試験に官報合格したので、それ以来準備の大切さを心に留めて業務に当たっております。

当事務所は昨年11月より新スタッフが2名入所しました。それからというものの、毎月初に必ずミーティングをしてその月内に対応すべき業務を共有し、少しでも効率よく動けるよう取り組んでおります。またスタッフが新たな業務に取り掛かる際は、必ず3分時間を使って作業工程を組み立ててからスタートするよう指導しております。それでも早く終わらせないとと思って猪突猛進でスタートしてしまうこともしばしばあり、後でやり直しがたくさん出ることもあるのですが…そこは根気よく伝えていきます!

納期が迫っているにも関わらず作業効率がなかなか上がらないという方、もったいないと思わずに「急がば回れ」で作業する前に「お品書き」を書いてみては如何でしょうか?