さて3回に亘って令和2年年末調整の改正点を説明して参りましたが、では実際年末調整にどう影響するのかを説明致します。

年末調整で記入すべき書類は以下の3種類になります。

①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

②給与所得者の保険料控除申告書

③給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

①②については昨年までとほとんど変わりません。変わったところと言えば「ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除に関する改正」に関する箇所ですね。いずれにしてもしっかり記入できていれば年末調整ソフトが間違いなく計算してくれますので、さほど心配しなくても良いかと思います。

改正点の部分では無いですが、毎年年末調整をしていて感じることとして、配偶者や扶養親族の所得額の記載を間違えられている方が非常に多いです。ここを間違えてしまうと税額の計算に大きく影響を及ぼしてしまいます。ここで記載すべきは「所得」であり「収入」ではありません。つまり給料をもらっている方については「給与収入(いわゆる額面金額)-給与所得控除」が「所得」となります。しかしそうなると「給与所得控除はどうやって計算するの?」となりますよね。もちろん計算式はありますが、正直分からないという方は①の書類に「給与額面金額は〇〇円」と書いた付箋を貼っておけば、年末調整担当者が意を汲んで正確に計算してくれるハズです。

③は今年から出来た書類になります。見ると何だか複雑そうですが、ちょっと分けて考えましょう。

③の中の基礎控除申告書は基礎控除に関する改正を受けて出来たものです。しかしその改正で影響を受けるのは所得金額が2,400万円超である一方、給与収入が2,000万円を超える方はそもそも年末調整の対象外です。ということは書かなくても影響は無いと考えていいでしょう。

次に所得金額調整控除申告書は所得金額調整控除に関する改正を受けて出来たものですが、これも①に障碍者や扶養親族の生年月日を記載する欄がありますので、そこの記載がしっかり出来ていればソフトが自動計算するのではと考えます。ということはこれも書かなくても影響は無いと考えていいでしょう。

最後に配偶者控除等申告書ですが、これも①に配偶者の所得金額を記載する箇所がありますので、そこの記載がしっかり出来ていればソフトが自動計算するのではと考えます。ということはこれも書かなくても影響は無いと考えていいでしょう。

以上いかがでしたでしょうか?改正点がいくつもあって大変複雑な計算になっていますが、書類を記入する従業者側はほぼ例年通りの対応で大丈夫そうです。我々計算する側は色々注意しなければならない点が多いですが、所得金額の把握が出来れば乗り切れそうですね。

しかし本来税金というのは「公平、中立、簡素」という観点を重視して法を制定しなければならないものですが、今回の改正については「公平」「中立」を維持しようとする余り、妥協に妥協を重ねた結果「複雑怪奇」になってしまっていますよね。国民が全く理解できない制度を作ってどうするんだ!という思いで一杯ですし、我々も納税者への周知や処理に時間が掛かって大変な思いをしています。

私としてはこの状況をただ指をくわえて見ているだけではなく、しっかり納税者及び税理士の声を然るべき場所に届ける活動をしていきますので「この税制はおかしい!不公平だ!」というのがあれば、ぜひ教えて下さい。