租税教室の概要については前回のコラムでお話しましたが、何故自分の時間を削ってまで私が租税教室に携わっているのか?たっぷりとお話したいと思います。
私が税金の存在を明確に認識するようになったのは大学生の時のこと。当時軽音楽のサークルに入っていて、その活動費捻出のためコンビニの夜勤で週2日ほどアルバイトを始めました。コンビニ夜勤は1回の勤務時間が長く、時給も割高なため週2日でも月に10万円前後稼ぐことが出来ました。高校生の時はアルバイトをして稼げても月にせいぜい5万円程度、倍以上の収入が入ると思うと給料日が待ち遠しくて仕方ありませんでした。しかし胸を高鳴らせて給与明細を見た途端、私は唖然としました…「給料が10万円もらえないじゃん!」。皆さんもうお分かりかと思いますが、源泉所得税を引かれていたため手取りは10万円を切っていたのでした。「えっ、そんなこと聞いてないよ!知っていたなら誰か教えてよ!」当時はそう思ったものでしたが、年を経て色々と世の中が分かってくると、それは難しい話だと理解しました。前回もお話した通り、租税教室が開始されたのは平成15年ですので、私たちの世代は税金の話なんてほとんど習ってなんかいません。また私より大人の人達もまた然りで、何となく税金が引かれることは分かっていても税金の制度のことなど説明できません。
その後紆余曲折を経て私は税理士を目指すことになったのですが、税金の勉強をすればするほど納税者に優しくない、七面倒な税制ばかりであることに気づきました。そんな時ふと思ったのが「国は国民に対し納税を義務と言いながら、その仕組みすら何ら教えてきていない。これは国民が税制を知らない方が国の都合の良い税制を作れるようにしているのではないか?」と。税金は法律に基づいているとは言え、一方的に財産を収奪されるものです。それだけに納得して税金を払いたいし、お客様にも納得して税金を払ってもらいたい、そしてお客様が納得して税金を払うために私が税金のことを教えていきたい、そう強く意識し始めるようになりました。そんな折、一足先に税理士となった受験仲間から租税教室の存在を聞き、税理士となった暁には積極的に関わっていくことを決めました。
先週放映された人気ドラマ「ドラゴン桜2」でも、阿部寛扮する主人公の桜木健司が「国はなぁ、お前らにはバカなままでいて欲しいんだ!何にも疑問を持たず、何にも知らないまま調べない。ただひたすら政府に従い働き続け、金を払い続ける国民であって欲しい!!国はお前らにはただひたすら黙々と馬車を引く馬車馬であって欲しいんだ!(中略)なぜ社会はこうなっているのか?誰がどんな意図でこの仕組みを作ったのか?本質を見抜き、自分なりの答えを出す力を付けろ!その時初めて、馬車馬が人間になれる!!」と生徒たちに勉強をする意味を強烈に訴えたのでした。正に私が言いたかったことを公共の電波で代弁してくれました!
今の世の中、コロナ禍で大変な状況になっています。それだけでなく激甚災害も毎年のように発生しております。そういうことがある度に税金の使い道が話題になりますが、「本当に国民はそんな税金の使い方を望んでいるの?」と考えさせられることが多々あります。我々税理士は税務の専門家として政府等にもあるべき税制を毎年提言していますが、中々思うようにいきません。やはり国民の税金に対するリテラシーが高くならないと機運が高まらないのかなと個人的には思っております。そのために早い段階での教育は大変重要です。微力ではありますが、少しでも国民の税への意識が高まるよう活動を続け、結果納税者が納得できる税制になるようにしていきたいと思っております。