今年の確定申告が終了し、一息ついていた3月21日の朝、大谷翔平選手の専属通訳だった水原一平氏がドジャースから解雇されたという衝撃的なニュースが飛び込んできました。
最初は何があったのか分からずただただ驚くばかりでしたが、その後の報道で水原氏は、米・カリフォルニア州では違法とされているスポーツ・ベットで多額の借金を抱え、大谷選手の口座からブックメーカーに対し、日本円で約6億8000万円もの大金が送金されていたということが判明、解雇されたことが腑に落ちました。
その後もさまざまな報道がなされており、3月26日には大谷選手が声明を発表するも、解明に向けて長期化の様相を呈しているのは皆さまご存知の通りかと思います。
水原氏が違法賭博に手を染めていたのであれば、断じて許されることではありません。それは別に裁かれるとして本件については、大谷選手の口座からどうやってブックメーカーに対し送金がなされたのかが問題の焦点かと思います。
一部報道によると、水原氏は大谷選手の通訳のみならず、練習相手や運転手、遠征先での食事の手配や経費等の支払対応もしていたとのことです。そういうことであれば大谷選手の口座からの送金も容易であったと思われます。
通常大谷選手クラスであれば金銭管理は別の専門家に依頼しているものと考えられますが、異国の地で野球ファンから大きな期待を受けてプレーをしている大谷選手にとって、水原氏は通訳以上の心の拠り所であり、身の回りのありとあらゆることをお願いしてしまったのかもしれません。
そう考えると今回の事件は大谷選手にも瑕疵があったと私は思っております。
一つは水原氏に頼りすぎていたこと、もう一つは資金管理に関心が薄かったことが挙げられます。
大谷選手のようなメジャーリーガーの高額年俸選手には様々な分野の専門家を従え、その中にはもちろん経理のプロもおります。そういった人間がいるにも関わらず横領・窃盗は良くある話の様で、あるメジャーリーガーの代理人は「複数のチェック体制を確立しなければこのようなことは防げない」と言っております。
それだけでなく「英語が分からなくてもアプリにログインして最低限、資産を確認、管理して欲しい」と自分の身は自分で守るよう、繰り返し選手に伝えているそうです。
今回の一件はアスリートも一事業者、競技だけに集中すれば良い訳では無いという「教訓」と言えるでしょう。
私も税理士業界に入ってから、顧問先において社長以外の他の役員、経理職員、果ては社長の妻などの横領があったため資金繰りに窮し、最終的には破産してしまったのを何度も見てきております。
破産の原因を探ると、いずれも社長に資金管理の意識が薄かったことに尽きます。そういう窮状を目の当たりにして思い出すのが、修業時代に経理外注のスタッフとして定期的に出向していた会社の社長です。
その社長は経理に対し、5日ごとに通帳残高を報告するよう求めてきました。従事していた当時は正直面倒としか思えなかったのですが、様々な顧問先と関わる様になってからその意味が理解できました。
事業を行っていく上で資金は「血液」に例えられるほど重要で、何かあったらたちまち企業の存亡危機になります。それをその社長は良く分かっていただけに、資金を自身でしっかり管理することによって一代で年商数十億円の企業にし、それを維持していたのではないかと思っております。
改めてではありますが、事業者は営業だけに注力していてはダメです。
会計の入力は自社の経理担当なり当事務所なりにお任せ頂いても構いませんが、毎月必ず通帳残高を自分の目で確認して下さい。
それが自身の事業を守る第一歩です。