親の会社を継ぐ後継者は忙しい―
たいてい、スピード出世するので、現場知識の習得と同時進行でマネジメントを学ぶ必要があります。
さらには、会社の課題がとてもよく見える立場なので、その改善案の策定・実施という仕事もあります。
加えて、それらは往々にして先代や社員と、様々な対立を生むために遅々として進まないことが多い。ふと我に返った時、「何一つ物事が進んでいない」と感じることは多いのではないでしょうか?
仕事において時間が足りないというのは2種類あると思います。
1つは、製造能力を超えた受注を受けて、昼夜問わず働いても生産が追い付かない、というパターン。これに関してはいわゆる時間管理術や、行動管理、あるいは工程の見直しなど論理的な対応が功を奏する可能性はあるでしょう。
一方で厄介なのが、自分でやるべきこと、学ぶべきことを創り出して、そのことに追われている状態です。
例えば、同業者団体の忘年会や新年会は、義理ごとだから参加は必須、という考えもありますが、実は行かなくても案外何も起こらないことも多いです。そもそもあなたがいないことに気づかない、なんてことも少なくないでしょう。
何か新しいことを始めるに際して、色々な市場分析をやらなきゃいけないので資料を読み込まなくては!と大量の資料を準備することもあるかもしれません。確かに市場分析も大事ですが、分析はほどほどにして「小さく始めてみる」という選択肢もあるはずです。
実は人は「退屈」をとても嫌います。
とある研究チームの実験で、被験者に、何もない部屋で6~15分間、1人座っているよう指示しました。その後のアンケートで、約半数は「不快であった」と答えています。
さらに、彼らの15分の思考時間に、希望すれば痛みを伴う軽度の電気ショックを受けられると伝えてみました。つまり、「退屈しのぎに痛い電気ショックを受けたければ受けられますよ」と提案したのです。
その結果、男性被験者の66%が1回以上の電気ショックを希望しました。このことが表すのは、人は「痛み」という不快な感情であったとしても「退屈」よりマシ、と考えている人が多いということではないでしょうか。
そして現実の世界では、退屈を避けるため優先順位の低いタスクで時間を埋めている可能性が無いだろうか?ということです。
現在Google、NIKEなどの世界的企業が「戦略的小休止」に注目していると言います。何のことは無い「意図的に何もしない時間を持つ」ということです。
私たちはやることが無い時間を恐れ、価値の共有を無視して、次々と1日をタスクで埋めていきがちです。
実はその背景には、「仕事で成果を出さなければ自分には価値が無い」という裏のテーマも隠れていることが多いようです。
そういったことを含めて、何もしない時間を作ることで、自分と向き合い、本当に自分が今やるべきことは何かを考える。そんな時間を取ってみてはいかがでしょうか。
例えば、朝の始業前の2分、そして昼食後の15分程度を戦略的小休止の時間に充てる、そんな感じで良いと思います。
その時には意図して何かを考える必要はありません。ただ、浮かんでは消える思考をぼんやり眺めているだけでOK。
すると、今まで思いつかなかったアイデアや、課題に気付くことがあります。そして「退屈」に敢えて向き合う覚悟をすることで、無駄なタスクに時間を侵食されずに済む可能性が高まります。
後継者の方で「時間が足りない」と感じるならば、是非一度、戦略的な小休止を取る習慣を持ってみてはいかがでしょうか。今本当にやるべきことが見えてくるかもしれません。
(参考文献:月刊ビジネスサミット2023年2月号)