税理士事務所の1月は本当に忙しいです。
前回のコラムでもお話しした通り、上旬までは年末調整対応があります。それ以外に1月末が提出期限の税務書類として「給与支払報告書」「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」「償却資産税申告書」があります。
今回はこれらに係る業務についてご説明致します。
「給与支払報告書」とは、お客様である事業者が従業者に支払った1年間の給与を市区町村に報告するための書類です。これを基に、市区町村は各従業者の前年の所得を確認し、住民税額を算定します。
ただ内容については源泉徴収票とほぼ同一のものとなりますので、年末調整が完了すれば税務ソフトが自動的に作成してくれます。
それだけであればそれほど大変ではありませんが、お客様の従業者それぞれの居住する市区町村に提出しなければならないので、ある程度税務ソフトが取りまとめてくれるとは言え、確認や提出にはそれなりに時間が掛かってしまいます。
まだ電子申告が無かった時代は、それこそ市区町村ごとに仕分けをするボックスを作り、封筒に封入し郵送していたので結構な作業量でしたね。
「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(以下「合計表」)」とは、法定調書(源泉徴収票、支払調書)の種類ごとに延べ人数と支払金額、源泉徴収税額などの総額を記載し、さらに、そのうち税務署へ提出する分の合計を記載する様式です。
この法定調書のうち支払調書とは、事業者が1年間に支払った「報酬・料金」の総額、「相手先の情報」を税務署に報告するための書類です。支払調書は支払内容によって細かく分けられており、多くの種類がありますが主なものは次の4つです。
①報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書→源泉徴収の対象となる報酬をフリーランスや士業などに支払った場合に作成・提出するもの
②不動産の使用料等の支払調書→不動産等の借受けの対価など(いわゆる事務所家賃など)を支払った場合に作成・提出するもの
③不動産等の譲受けの対価の支払調書→譲り受けた(購入した)不動産等の対価を支払った場合に作成・提出するもの
④不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」→不動産等の売買または貸付けのあっせん手数料を支払った場合に作成・提出するもの
この支払調書を作成するに当たり、まずお客様より上記に該当する支払いがその年にあったかの確認が必要になります。
その上で帳簿と照合し、未記帳の月分の支払があれば別途資料を請求します。必要な情報が集まったら支払金額や相手先の情報を入力します。
全ての支払調書の作成が完了したら、源泉徴収票の集計と併せて合計表の作成に移ります。
延べ人数と支払金額、源泉徴収税額などの総額は源泉徴収票、支払調書の作成が出来ていれば税務ソフトが自動で集計してくれますが、ここではそれぞれの提出範囲に合わせて提出すべき法定調書のピックアップがメインの作業になります。
最後に合計表の必要事項を記入して作成が完了します。ということで合計表の作成はほぼ支払調書の作成と言っても良いかもしれません。
支払調書は源泉徴収票と比べれば数は多くないですし、入力項目も少ないですが、上記の様に細かい確認が必要になりますので、それなりに作業時間は掛かる業務ですね。
「償却資産税申告書」とは、固定資産税の一種である事業者が所有する償却資産にかかる税金を計算した申告書です。
償却資産税は、固定資産のうち土地や建物、車両などを除き、パソコンやコピー機、印刷機など事業で使用される減価償却資産に課せられます。
償却資産申告書の作成に当たっては、事業で使用される減価償却資産を種類別に分けて明細書をまとめる必要があります。
ただ申告の際、減価償却資産があれば固定資産台帳を作成しますので、そのデータを援用すれば税務ソフトが基本的には自動的に集計してくれます。
そう考えると支払調書の作成と比べれば作業量は各段に少ないと言えるでしょう。但し未記帳の月に固定資産の購入、売却があった場合は別途資料を請求して入力する必要があるなど、一定の手間はありますね。
さて3回に亘って税理士事務所の業務内容(実務編)をお話しして参りましたが、如何でしたでしょうか。
これらの業務は特殊税務しか請負わない事務所以外の事務所は必ず対応しなければなりません。税理士事務所の業務をご存知無かった方にとっては、余りの業務量の多さに結構衝撃があったかもしれません。
これらの業務を当たり前のようにこなすには、それぞれの業務に必要な知識が必要なことはもちろん、テキパキと効率良く作業を進めるスピード、要領の良さ、単純作業の繰り返しにもめげない精神力、期日までに何が何でも作業を完了させようとする責任感が必要になります。
税理士事務所で働きたいと考えている皆さんには上記を参考にして、ご自身にこれらの資質が備わっているかどうか、見つめ直して頂いた上でご応募頂けると幸いです。