前回のコラムでは税務調査の概要、及び臨場調査終了までの流れをご説明しましたが、今回は臨場調査以後の流れをご説明致します。

臨場調査以後、課税庁側は臨場調査で得た情報を税務署等に持ち帰り、非違の可能性がある事項について法律上指摘しても問題無いかの検証を行います。

またそれによって追徴税額がどれ位になるのかの試算も行います。

これらを調査官は直属の上司である統括官に報告し、最終的に非違と指摘する箇所を決めていきます。

 

一方納税者側は税理士が調査の動向を踏まえ、非違の可能性があるとして指摘された事項のうち、どの程度非違と指摘されるのか分析し、お客様に伝えます。

というのも非違が疑われるものが全て指摘事項となることは稀で、状況によっては指摘事項無しとなるケースもあります。

なぜこのようなことが起こるのかと言えば、臨場調査だけでは課税庁側が分かり得ないこともあり、後日納税者側が処理の正当性を説明できる別の証憑や報告書などを提出することによって疑いが晴れることがあります。

この辺りは税理士がどうしていくのかの戦略を立てて上手くリードしていけるかどうかが鍵で、それ次第で結果は大幅に変わってきます。

また非違であることを立証する責任は最終的に課税庁側にあり、そのためには時間が必要になってきます。

ただ調査官はこの案件だけに時間を割けるわけではないため、どこかで手打ちをしなければならなくなります。そういった時、立証に時間が掛かりそうな事項については指摘しないという判断を下す訳です。

仮に非違が疑われるもの全てにおいて時間が掛かりそうであれば、「指摘事項無し」となるのです。

 

このような時を経て、課税庁側の指摘事項が決まったら調査官から税理士に連絡があり、その報告を行います。

そこで税理士は非違事項を受け入れるものは受け入れつつ、受け入れないものについては先に用意した資料等を基に反論します。

ここでも調査官の動向を伺いつつ、どうすれば納税者が納得する形で税務調査が終了するのかを考えて折衝します。

ここも税理士の腕の見せ所で、税務の知識、説明力、交渉力が必要になります。

この折衝の状況もお客様にお伝えし、どの辺りが落としどころになるのかを説明していき、調査終了に向けまとめの作業に入ります。

この時、お客様の中には非違は一切認めたくないと訴えてくる方もいらっしゃいます。

しかし調査が長引けば、折衝を続けなければならず、課税庁側より更なる追加資料を求められたりして、その抽出や作成のために時間を割かなければなりません。当然税理士に対する報酬も長引けば長引くほど加算されていきます。

また課税庁側が非違があると認められる証拠は揃ったとして、更正処分(課税庁が納税者に対して、本来納めるべき税額(課税庁が算出した金額)を通知し追加の税金や延滞税を課す手続き)を下してくることもあります。

そうなってくると原則的にはその処分に従わざるを得なくなります。

それでも納得いかないようであれば課税庁側に再調査の請求をするか、国税不服審判所に審査請求をすることが出来ます。

この請求自体にはお金は掛かりませんが、こちらの対応は税理士だけでは難しいこともあり、別途弁護士費用が最低100万円ほど発生するのが一般的です。

結局のところ、そこまで時間とお金を掛けてまで非違事項を争うのかということを税理士はお客様にお伝えして、ある程度のところで納得して頂くよう促すケースがほとんどです。

 

最終的に調査結果に対しお客様の了解を得られたら、税理士はその旨を課税庁側に伝えた上で、修正申告書を作成・提出し、追徴分の本税に係る納付書をお客様にお渡しします。

これで税務調査は終了となります。

この後お客様に税務調査に掛かった事前準備、臨場調査の立会い、事後折衝、修正申告書の作成料を請求します。

ここで通常の税理士業務の請求と違うのは、調査の結果によって請求額に変動額があるということです。

概ね想定内の展開になった場合は税理士事務所規定の報酬を請求して問題ありませんが、税理士が計算ミスを犯していた場合や、税理士の説明不足でお客様が正しい処理を知らなかったが故に非違となってしまった場合は、その程度に応じ請求を減額することがあります。

逆にお客様の悪質な行為が税務調査によって発覚し、多額の追徴税額や重い処分が下される可能性があったものを、税理士の折衝によって追徴税額が少なくなったり処分が軽くなったりした場合は、貢献度に応じて成功報酬を請求することもあります。

それだけに先にも言いましたが、税務調査対応は税理士の腕の見せ所で、お客様に継続してご契約頂けるかどうかが試される試金石と言えます。

ではどうしたら税務調査の対応力を磨けるのか、次回のコラムで(私見も含め)お話しして参ります。