インボイス制度のお話しも3回目となりました。今回はインボイス制度が導入されることによる影響、もしかしたらビジネス撤退を余儀なくされるかもしれない業種の方向けにお話していきたいと思います。
さて消費税は前回以前のコラムでもお話した通り、全ての事業者に納税義務があるわけでは無く、その課税期間の基準期間(原則として2年前の事業年度)の課税売上高が1,000 万円を超えるかどうかで決まります。基準期間の課税売上高が1,000万円超であれば消費税の「課税事業者」として申告・納税の義務がありますが、1,000 万円以下の事業者は原則として消費税の納税義務が免除され、消費税の申告を行う必要はありません。このような事業者のことを「免税事業者」といいます。しかしインボイス制度が導入されると、課税事業者にとって免税事業者との取引は仕入税額控除の対象外となるため、免税事業者との取引が多ければ多いほど消費税の納税額が増えてしまい、その結果、免税事業者は取引から排除される恐れが出てきます。仮に免税事業者でもB to C(対消費者向け)ビジネスを展開されている事業者(美容師、医師、エステなど)であれば影響は少ないかもしれませんが、B to B(対事業者向け)ビジネスを展開されていて、かつ従業員がいないような個人事業主(デザイナー、エンジニア、ライター、カメラマン、コンサルタントなど)はモロに影響を受ける可能性が高いです。
それでは基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていなければ課税事業者になれないのかと言ったら、必ずしもそうではありません。1つの方法として「消費税課税事業者選択届出書」をあらかじめ税務署に提出していれば、意図的に課税事業者になることが可能です。そうすれば免税事業者ということを理由に、問答無用に取引から排除される様なことは無くなるでしょう。
しかしそれと同時に消費税の申告、納税をしなければならなくなります。消費税導入時は計算方法が割とシンプルで自力でも何とか申告書の作成が出来たのが、消費税を使ったドラスティックな節税対策が横行した影響で消費税の計算は年々複雑化しており、そこにインボイス制度が導入されたら、恐らく素人では申告書作成は不可能なように私は感じております。それと消費税は「預り金」的な性格のものであるため、所得税や法人税に比べても納税額が多額になることが多いです。それこそ1,000万円を少し超えるような年商規模であっても納税額が50~60万円になることもザラにあります。
そう考えると「取引から排除されるリスク」と「消費税の申告・納税に掛かるコスト」を天秤にかけて検討する必要があり、そのためには「納税シミュレーション」が不可欠になります。
当事務所では免税事業者である事業主のご相談も勿論承っておりますし、必要に応じシミュレーションも行うことも可能です。ただ今後インボイス制度が世に知られてくると問い合わせが殺到する可能性がございますので、このコラムを読んで心配になった事業者の方はお早めにご相談を。
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