「先代はどんな魅力で顧客と繋がろうとしたのか?」

これは後継者が会社の未来を考えるために知るべきことですが、先代や古株社員に聞くほか、「お客様に聞く」つまり顧客アンケートという方法も有ります。とはいえ、アンケートというのは結構難しいもので、質問の仕方一つで結果が変わることも多く、顧客の本音を探るにはかなりの工夫が必要となります。

であるなら「数ある同業者の中で、なぜ当社を選び続けて下さるのですか?」というシンプルな質問にし、自由に回答して頂く形も有ります。これは自社の強みを炙り出す方法として、一時期、中小企業を中心に実践されていた方法の一つです。

このアンケートによって顧客の生の言葉を知ることが出来るので、ホームページなどに載せる「お客様の声」を集めるという意味でも、有益な方法の一つだと思います。この方法を実践した経営者がおりますので、その取組内容をご紹介させて頂きます。

 

その経営者は上記の様にお客様にアンケートを取り内容を確認したところ、「いつも迅速な対応で助かる」「手続きが正確で安心できる」「色々と相談しています」など嬉しい言葉が多く頂けたそうで、しばらくはその声を深く考えずに受け取っていました。

しかし後で何気なく見方を変えてみると「かなり問題なのでは?」と思うようになったそうです。なぜなら、これらのお言葉は「出来ていなければクレームになる」当たり前の内容ばかりで、逆に言えば「当社の具体的な差別化要素を、お客様に認識してもらえていない可能性が高い」からです。

出来なければ即クレームに繋がるようなことは、ビジネスとして「出来ていて当然」で、それは決して強みでも何でもありません。その経営者はアンケート結果を見て「お客様は進んで当社を選んでくれているというよりも、差し当たって不満はないから、当社から別の事業者へ変更していないだけ」だと気づき、とてつもない恐怖を感じたそうです。

 

この経営者に限らずこのようなことに経営者が気づくと、「顧客に選ばれるために何をするのか?」ということについて改めて考え始めると思います。そういった場合、最初に思いつくのは、専門知識や技術を高めるという方向性ではないでしょうか。

しかし、例えば歯医者さんの口コミを見てみると、そのほとんどは歯科医の技術を評価している訳ではありません。優しいとか、説明が丁寧とか、痛くないとか、そういったところが「良い歯医者」の基準になっています。

逆に言うなら、素人に歯科医の技量などは評価できるはずも無いので、結局は顧客自身が分かる範囲でしか評価していません。つまり顧客が求めていることは、専門家がその技量を磨くことと、常に一致している訳ではないということです。

 

専門家の専門知識が高いのは当たり前のことで、顧客にとってそれはあくまでも「前提」です。確かにその専門性を極限まで磨けば、それは差別化要因になるかもしれませんが、やはりベースとして考えるべきは「お客様の希望はどこにあるのか?」ということでは無いでしょうか。

そこで大事なのは「出来ることを増やす」ことよりも「顧客の潜在的欲求を探り、そこにフォーカスする」ことで、そのための努力が必要です。大企業と違い、中小企業は限られたリソースで特徴を出す必要がありますので、全ての行動について、目的の明確化をしたいものです。

 

このようにお客様の言葉には説得力があります。先代と後継者の意見が合わないことがあっても、お客様の言葉が疎かにされることはありません。むしろそこに先代と後継者の共通の目的を見出すことが出来るのではないでしょうか?

 

当事務所は税務・会計の正しい計算に基づき、申告期限内に税務申告書を提出することは当然のことと捉え業務に当たるだけでなく、お客様がその税額に納得するよう分かりやすく説明し、余裕を持って納税できるように努めております。

更にお客様の事業が更に発展していけるよう、お客様の声に耳を傾け、問題点があった場合は様々な角度から分析し、解決・改善のための提言・提案も積極的に行っております。何かお困りごとがある経営者の方は是非当事務所にご相談下さい。

(参考文献:月刊ビジネスサミット2022年6月号)