個人事業で売上が安定して増えてきたので、そろそろ法人成りを検討したい……
しかし、法人成りをして、どのようなメリットがあるか?また、どれくらい節税ができるのか?疑問に思う方も少なくないと思います。
本コラムでは主に法人成りのメリット・デメリットに焦点を当て解説をしていきます。
<法人成りとは>
法人成りとは、個人事業主が株式会社、合同会社などを設立し法人化することで、個人事業主時代の得意先や取引先、資産や負債などを(ケースバイケースで)引き継いでスタートすることを指します。
【メリット】
①給与所得控除が使える:個人事業主が法人成りをして会社から役員報酬を受け取るようにすれば、自身の給与所得控除分につき課税所得を圧縮できます。
②生命保険料を損金計上できる:個人事業の場合、生命保険料を必要経費にできませんが、法人の場合、一定の要件を満たせば生命保険料を損金算入できるため、利益を圧縮しながらイザという時の備えが充分にできます。
③経費の幅が広くなる:個人事業では、その事業に直接関連した経費しか計上できませんが、法人では定款に記載している事業に関連しているものであれば損金計上が可能です。
④青色繰越欠損金の繰越控除の年数が増える:個人は3年ですが、法人の場合は10年になります。
⑤事業年度が自由に設定できる:個人事業の場合は暦年(1/1~12/31)と時期が固定されていますが、法人は事業の状況に応じて自由に設定できます。これにより繁忙期を避けて決算・申告月を設定することも可能な為、余裕を持った決算申告対応することが可能になります。
⑥税金の計算方法が変わる:所得税では超過累進税率(所得が高くなるほど税率が高くなる)であるのに対し、法人税では二段階比例税率(課税所得800万円をラインとして固定税率)であるため、事業所得500万円を超えると法人の方が税負担が少なくなります。
⑦減価償却の取扱いが異なる:個人事業では原則として強制償却ですが、法人では限度額内での任意償却なので、償却費の計上額を経営状況に合わせて調整可能です。これにより④の繰越欠損金の切捨てを防止することができます。
【デメリット】
①登記の手間と費用:登記は設立時のみならず、役員の就任、退任など登記事項の変更があった場合、その都度登記申請を行う必要があり費用も発生します。
②社会保険の加入:個人事業では社会保険の加入は業種や規模により任意加入のケースがありますが、法人では社会保険加入が義務付けられます。
③赤字でも税金が発生する:個人事業では赤字で一定の要件に該当する場合、住民税均等割は発生しませんが、法人では最低7万円(状況により変動あり)の法人住民税均等割が発生します。
<まとめ>
法人になると様々な義務が課されるため、その分費用や事務負担も増えますが、一方で税務メリットは個人事業より一般的には多く、さらに社会的な信用が上がります。
また、個人事業だと事業主が亡くなった場合、手続きの煩雑さにより事業の継続が困難なケースもありますが、法人の場合、株主総会で新たな取締役を任命することで、比較的容易に事業の継続を行うことができます。
法人成りをした際の税務会計業務は複雑な処理が必要なケースがあるため、詳細のご確認やご不明点は当事務所までご相談下さい。